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約5ヶ月ぶりに続きのアップです。

来年、同人誌での発行を予定していまして、色々進行中です。

 声の主は、誰がと敢えて言わずともわかる。薬師と少女の背後に控える巨大な竜が発したものに違いなかった。

「所詮は獣――なるほど確かにこの出で立ちで謁見などすれば、王の心臓が縮み上がってしまうやもしれんからのお」

 からかうような口調は、老齢な魔法使いの神経を逆さに撫で上げる。

「なっ……! 獣の分際で王を愚弄するとは」

 魔法使いたちが額を赤く染めて激昂する様子に、竜は愉快なものを眺めるかのように目を細める。

「――まあ冗談だ」

 竜は小さな笑いを漏らす。

 小さな――といえども、巨大な竜の発する笑い声は空気を振るわせるほど。この虹色に輝く竜にとって、ずらりと並ぶ魔法使いたちも、重々しい装備をまとう騎士たちも取るに足らない存在なのだろう。

「もっとも、おぬし等の敬愛する王とやらは」

 笑いを含んだ声で、竜は周囲をぐるりと見渡した。

「――たかが獣の戯言などに、いちいち腹を立てるような器の小さな人物ではなかろう……のう?」

 ぐう、と長たる魔法使いは皺だらけの唇を堅く引き結ぶ。

「まあ案ずるな。我とておぬし等の王の御前に、この姿のままで参上しようとは思っておらぬ」

 相変わらずの軽口に、長たる魔法使いは何度か口を開こうとするものの、思い直しては悔しそうに唇を噛み締める。

 言葉を失う老齢の魔法使いのありさまに、バレリアンは苦笑を漏らす。

「お嬢ちゃん。魔法使い様の許可も降りたようだぞ」

 ティーナに近寄ると、大きな手をふわりとした黒髪の上に乗せる。

「…………本当ですか?」

 どうも快く受け入れられたとは思えない。魔法使いたちの発するぴりぴりした空気は相変わらずのままである。

「俺がそう言っているんだからそうなんだよ」

 何度かティーナの頭の上で手のひらを弾ませると、最後の仕上げにくしゃくしゃとかき回す。

「――わかりました」

 ティーナは表情を引き締めると、こくりと頷いた。そして、自身の背後にて鎮座ましましとしていた竜を見上げる。

「それじゃあ、お願いしてもいいでしょうか?」

 バレリアンとティーナのやり取りを眺めていた竜は、そっと首を垂れると、恐らくほほ笑んだのだろう。口の端を引き上げて、大きな牙を覗かせる。

「よかろう。我が同胞、志を同じくする友のたっての頼みとあらば」

 たしんと足で地面を踏みつけ、竜はぷるんと尻尾を振る。

 その振動の大きさは地響きにつながり、集まった者らはとっさに身体をすくみあがらせるが、その一瞬の後、彼らは己の眼を疑うこととなる。

「これなら、文句はあるまい?」

 にやり。

 不敵な笑みを浮かべたのは、長身のひとりの青年の姿だった。

 たくましい肩の上を流れる長い髪は輝く虹色。笑みの形に細められたその瞳は、曇りのないアイスブルー。

 そう。見上げるほどの巨大な竜は、いとも容易く人の姿に変化したのだった。
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