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 ――さて。

 再開後の第弐幕でございます。前回を掲載したのと同じ週にケリをつけたかったのですが…うむー。妙なところで悩んでしまったので、いさなさんのご意見待ちでもあったわけです。てなわけでいさなさん、こんなんなりましたー♪ (アドバイス感謝!)

 休んでいた間に都内に遊びに出かけたり(いさなさんと息抜きしてきたよん。楽しかったー)なんだりしていたのですが、タイムリーにルドゥーテの薔薇展を観覧することができてよかったですvv そんな成果の一部を文に挿入してみたんですが、あんまり効果にならなかったかな。。。でもすごい迫力でした! 銅板画であのグラデーションの細密さと描写の緻密さに感嘆のため息しかでまへんね。はー。

 予定としてはあと一場面、六月までにできるかしらねえ; ってところですが。年のせいですかいのお、ゴホゲホ、何もなくともなかなか筆が進まなくてピーンチ! なのじゃが、それでもやっとのことで混迷から脱しそう…というか、一筋の光明がさしこんでまいりましたティーナの状況に書き手としてはどことなくホッとしております。つっても、まだまだ予断を許さない状況なんですがね。
 ここで気を抜かずにもう一週、がんばりますね!

 せめて自分の誕生日くらいにはクライマックスばーりばりになっていますように! 
 ええっ( ̄□ ̄;) 今がクライマックスじゃないの?ってツッコミはこの際華麗にスルーの方向で(爆)
 私的には大分前からクライマックス前哨戦ってところです。起承転結どころか余りが出ちゃいましたが(^^ゞ 

 か、完結には向かっているんですよこれでもね! 

 ひとつひとつ大事な布石というか、布陣を敷いておかないとラストに私が泣けないんだよー(何その自分勝手意見はっ)

 まあ、どうぞぬるっと(笑)見守っていただければ幸いでやんす。


** **** ** **** **** ** **** ** **** ** **** **



バターン…!

 大きな音を立てて、両手で思い切りよく扉を開け放つ。

 とたん、室内にたちこめていたその香りを思い切りよく吸い込んでしまい、ティーナは思わずむせかえるような心地して、勢いくらりと立ちくらみを催しかけた。

 二階の奥にあるセシリアの寝室からここ、階下の大食堂に至るまでティーナは何度も足がもつれ、時折がくんとその場に手をついて転んだりもした。

 だが、すぐにまた立ち上がり、追って来る召使いのことなど厭わず、一目散に駆け出してやっとの思いでたどり着いたせいもあろうか。

 寝起きの上、現在はセシリアの病弱な身体を持つ身にはひどく体力を消耗をしていこともあり、いつにも増して息をぜいぜいと肩で弾ませていた。

 しかし それでも。

 ティーナは懸命に両足に力をこめて踏ん張り気味にして上体を支えると、きっと顔を上げてみる。

 すると、彼女の視界いっぱいに広がるのは、ひたすら薔薇・薔薇・薔薇
の饗宴ともいうべき、一種異様な光景だった。

 ファナトゥの領主にして、旧家・名家ともいうべきデヴォンシャー家。

 その屋敷のメインダイニングともなれば、広い邸内の中でも一、二を争うほどの広さを誇る上、時に王族を招いての晩餐会を催すことも過去に度々記録されていることを鑑みれば、その規模と手のかけかたも尋常ではないことがすぐにうかがえよう。

 王の血に連なる者をはじめとする、貴族や都市の名士など、実に名だたる賓客を迎え入れるにあたっては、王都からだいぶ地方寄りのファナトゥという、辺境の田舎暮らしの上に鄙の住まいとはとても揶揄できぬ程、それはそれは見目麗しく凝った装飾が室内一面に施されており、王の離宮にも匹敵するのでは時に唸りたくなるのも無理もないぐらい、群を抜いてきらびやかな空間に仕立て上げられていたのだから。

 かような室内の中央、でんとしつらえられた長細いテーブルの上。そこが今朝に限って普段よりも華やいだ演出がふんだんになされていたのは、何か意図があってのことだろうか。

 モダンローズとも称される、ハイブリット・ティーローズ系をはじめ、野趣にあふれながらも素朴で力強ささえもかもし出すワイルドローズはもとより、さらにはかわいらしいポンポン咲きの類など、多種多様な種類に加え、赤・白・ピンクを基調にたまに黄色や紫など毛色の変わった種を添え色にして体よく盛られた薔薇の花々。

 それらは彼女の来訪をいかにも「ようこそ」と歓迎しているかのように、百花繚乱の名を冠するに相応しく、実に見事に美しく咲き誇っていたのだった。

 「母上…!」

 ティーナ、いや見た目セシリアの姿がその場に現れてすぐのこと。がたんと音を立てて席を立ち、真っ先に彼女の元へとやってくるのは、ティーナともよくよく面識のある一人の青年。

 部屋にさしこむ陽の光を受け、よりきらきらと輝く金の髪。
 美しく、どこまでも澄んだ空の青を封じ込めた色の瞳。
 それから、口許にやわらかな微笑をたたえながら。

 たった今寝室から、しかも着崩した寝間着姿のまま飛び出してきた彼女の、しどけなく寝乱れた髪を整えてやろうとでもいうつもりなのか、腕をぬっと伸ばしてくる。

 しかし、その手を無言のままぱしりと払いのけたのは、誰でもないティーナ本人だった。

 彼女はこれまでの生涯において、ただの一度たりとて他者に向けたこともないような怒りに満ちた形相と、誰に聞かせたことなどない程低い声音で「ディルナス…様」と凄みを増した呟きを唇に載せるのだった。

 そんな彼女の態度の急激な変化にディルナスは一瞬目を丸くして驚きの表情を示したが、すぐにすいと目を細めてややも小首を軽くかしげる。

 それから、ふっと唇に笑みをたたえた後、どこまでもおだやかでやさしげなまなざしを浮かべて彼女を見やるのだった。

 普段とまったく、何ら変わらずに。いや、さらにいつも以上に。見ているこちら側の方が切なくて胸苦しくなるほど、限りない思いやりをもふんだんに含んで。

 「ディルナス様…」

 再び、うなるような声音でティーナは彼の名を呼んだ。
 眉根をきゅっとひそませ、先ほどよりももっと、警戒心を強めた表情で身を固くして構える。

 目前に迫る自身の恐怖と対峙するためか、それともひたすら威嚇しようとでもいうのか。背を思いきり丸めながら「フーッ」と睨みをきかす、まるで猫にでもなったかのようなこころもちで。

 「これは、これはどういうことなんですか? あたしに一体何をなさったんですか…っ!? お願いですっ。答えて下さい、ディルナス様っ」

 「…おやおや。ずいぶん、おかしなことを仰いますね、母上は。それはこちらのセリフですよ、本当に。後生ですから、どうか心静かに、なにとぞ落ち着いてください、母上。…いや、セシル? もしかしたら、この方が通じますか?」

 「ディルナス様っ!!」
 「セシル…? どうしてそんな他人行儀なことを…。いつものように呼んではくれないのかな、お兄さまと」
 「あ、あたしの話を聞いてください、ディルナス様っ」
 「もちろん、聞いているよ。セシル、僕のかわいい妹。気高い薔薇のお姫さま」
 「ディ…ル…ナスさ…まっ!」

 ひくり。自然とこみあげてくる、嗚咽。
 ぼたり。我知らず頬を伝うのは、落涙。

 どれだけ感情を昂ぶらせ、睨みをきかせ、怒鳴りつけてたとしても。 

顔色をさっと変えていたく動揺するどころか、一向に変わらないディルナスの自分に対する態度。

 そんな彼にまず白旗を掲げて降参したのは、他でもないティーナの方だった。

 「どうして…どうしてこんな…。ひどい。ひどいです、お二人とも。
 返して、返してくださいあたしの身体を。お願いですあたしを元に、ティーナに戻して…っ!」

 いくら泣いても、喚いても。
 やもたてもいられず、地団駄を踏んでも。
 ディルナスはただ、ゆるく微笑みを浮かべるばかり。

 慈愛に満ちた寛容な心持ちで、そっといたわるような視線で、彼女のことをひたすら見つめているだけにすぎなかったのだ。

 ――そのまなざしに、どこまでも果てしない哀れみを宿しながら。

 「ディルナス様、セシリア様、あの…どうかなさったのですか?」
 「――っ!」

 ちょうど頃よく、てててっと小走りで近寄り、彼女とディルナスの間に割って入ってきた一人の少女がいた。

 それは、ティーナにとってあまりにも覚えのありすぎる人物だった。

 ゆるやかに波打つ、長い黒髪。
 なじみのあるロータス魔法学院の制服姿。
 瞳には、藍より青い深海のような色をたたえて。

 そう…自分――だ。

 ティーナは思わず、背筋をぞくりと打ち震わせた。

 そして、今更ながら気付かされるのだった。
 今の自分が、本当に真の自分の姿ではないことを、こんなにも間近で、しかも明々白々と、仔細までつぶさに。

 「いいよ、ティーナは席に戻っていて」
 「で、でも…。ディルナス様」
 「いいから、ね? …僕に任せて」

 ひとさし指を立てながら、軽く片目をつむり、ほんの少し道化た振る舞いで彼女の不安を一掃させる。

 しくん。…何故に、ひどく胸が痛む。

 自身の名を呼ばわり、精一杯いたわろうとするディルナスのやさしさ。

 それが真の自分に向けているのではないのだ、ということがこうしてよくよく目の前で思い知らされることが、こんなにもつらいこととは……。

 「セシリア様…」
 「まあ、どうしましょう。いかがなさいましたのでしょうか。お加減がやはり優れないのでは…」

 ひどく大げさに目を見開き、軽く小首をかしげながら、心配そうに
彼女の顔をのぞきこもうとする…ティーナ、いやセシリア。

 自分の顔で、自分の声で。
 けれどその中身は…どうあってもセシリアなのだ。
 セシリアの顔で、セシリアの声で。
 しかし、自分はティーナなのだ、嘘偽りなどなく。

 ティーナは半ば混乱をきたし、ずくずくと痛む頭を両手で抱きかかえるように抱え込むと、勢いよくぶんぶんと首を振りながら激しく否定を繰り返す。何度も、何度も。

 違う…違うっ! あたしは、あたしが…ティーナなのに!

 「さあ、セシル。そろそろ部屋に戻ろうか」

 ハッと我に返ると、ティーナはいつの間にやらディルナスに腕をつかまれていた。

 慌てて身をねじり、彼の腕を振り払って彼から逃れようとするも、まったくもって無駄なこと。

 見た目、華奢で細身の身体を持つ彼、ディルナスのどこにこんな強い力が秘められていたというのか。

 いやしかし、それでも彼とてれっきとした成人近い男子の一人に何ら変わりはない。

 どれほどセシルの成りをしたティーナが全力を尽くしたとしても、小柄で細い手足を持つ彼女のこと。ディルナスに限らず、他の誰であろうと、ほんの少しばかり力をこめればやすやすと、彼女の意志の自由を奪うことなど造作もないのだから。

 「疲れただろう? あんなに興奮して…。そろそろ部屋に戻ってゆっくりと休むのがいいと思うよ。ガルオンから処方されている薬を…薬湯にしてあげるよ。あれなら飲みやすい上によく効くだろうからね」

 「い…いやっ」

 「薬を飲むなら…。そうだね、食事をどうしようか。軽く何か…ああ、スウプぐらいがちょうどいいかな。メリッサにでも頼んで届けてもらうようにしてあげるよ、セシル」

 「いやですっ。いやっ。離してくださいディルナス様…!」

 「そんな我儘を言わないで、セシル。ちょっと試しに食べてみてごらんよ。本当にね、今朝の朝食のスウプはとっても美味しかったんだよ? 野菜のうまみが濃厚に凝縮されていてね、甘みもほどよくて、ベーコンの塩味もよいアクセントになっていたんだ。好き嫌いが多い君でも、きっと気に入る」

 「ディルナス様…っ!」

 ティーナの願いむなしく、ディルナスは彼女の腕をつかんだままさっと背後に回りこむ。

 や、否や。がっちりと抱きかかえるような体勢を保ちつつ、その場から引きずり気味にしつつ、部屋を無理やり出させられるのだった。

 身につけた薄いロォンの白い夜着の背中越しに接近したディルナスの体温がほのかに伝わる。

 しかしティーナは、人肌の温かみに触れ、安心するどころか、その存在感にぞっとするほどの嫌悪を抱いた。

 彼が自分に触れているという、たったそれだけのことであるにも関わらず、吐き気すら覚えるほどに。

 これから自分をどうする気なのだろうか、ディルナスは。
 部屋に戻して、それから…。
 そうだ、薬を服用させるようなことを言っていたような。
 一服盛ってでも大人しくさせるつもりなのか? 

 ならば自分の手足を寝台に縛り付けて身体の自由を奪った後、口をこじ開けられ、そして無理やり喉に得体の知れない薬物を嚥下させられて、そして……。

 「い…いやっ。いや…いやよっ! あたしはあたしよっ。あたしがティーナなのよ…っ!!」

 ――その時だった。

 彼女の耳にゆっくりとドアの開閉する音が響いたのは。

 「ま、ガルオン様っ…!?」

 それに呼応するかのように、邸内の使用人の誰かの声も同時に上がる。

 ……え?

 「まさか…そんな?」

 ディルナスによって玄関ホールまで歩を進めてきていたティーナの視界に映るのは、邸内に足を踏み込んだばかりの一人の初老の男性の姿だった。

 簡素ながらもずいぶんきちんとした身なりを整え現れた彼の名は、ガルオン・ドゥメ・アルトゥン。

 誉高き王宮付き選任薬師の一族の長にして、最高職の位をも担う彼。襟元に光る金の羽根を模ったピンバッヂが何よりもその証拠であろう。

 しかし、ティーナにとってのガルオンとは――。

 「お、お父様…っ!」

 顔を合わせることなど実に久々すぎて、もしかしたらどこか遠い思い出をたぐりよせるような、懐かしいという心地すら覚えるかのような、自分の父親、それに相違なかったのだった。
 
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ディルナスさまの意地悪
意地悪ですね~ディルナスさまってば。
ティーナがいくら怒っても、この方はのらりくらりと交わしてしまうのですね。
一見人当たりがいいのに、こういう人が一番怖いかもしれません(^^;)
ティーナ、怒っても可愛らしいですね。もっとどかーんと怒るのかと思ったのですが、いくら一生懸命訴えてもまるで相手にしてくれなかったら、怒りよりも空しさを感じてしまって、悲しくなってしまうかも…。
最後にティーナパパが登場ですが、この後パパがどんな活躍をしてくれるのかが楽しみです。
いさな 2008/06/27(Fri)23:02:09 編集
んーまいっちんぐ♪(笑)
いさなさんこんにちは(*^_^*)
コメントありがとうございます!

やさしい顔しておだやかな態度で
いちばんひどいことをするのがディルナス様クオリティなんでしょうね、きっと(笑)
底知れぬ恐さといいましょうかvv

ティーナ、かわいく書けてますか!
基本、ティーナは泣いても怒ってもかわいいということなんでしょうね(ヲイ;)
>なんだそのラズリ目線は(爆)
さっすが主人公ちゃんです♪
(え。だよね?ラズリと二人でダブル主人公って位置づけでいいんですよ…ね?)

そうそう。
ティーナパパにミドルネームつけちゃいました(^^ゞ
ファーストネームにすぐファミリーネームですとなんか座りが悪いなあとちょっと思って。
このお名前は宮廷専任の役職者のみにしか名乗ることが許されないものという設定にしているので、ガルオンさんだけでティーナにはありません。
なんか仏蘭西風なオシャレな感じですね。
もちろんティーナもその後パパと同じ位に就任したら名乗れますがね♪
はてさて、娘のピンチをパパは救えるか!?
待て次号…!!
という美味しい引きにしていますが(^^ゞ
どうなることやらvv
毎回掲載するたびにハラハラドキドキ、わくわくルンルンと楽しいエンタメを提供していけたら書き手としてはこれ以上の幸いはございません♪

…さて今月もあとわずか。
がんばって当初の予定通りまで進ませたいところです!
やまの URL 2008/06/28(Sat)14:44:37 編集
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