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うぎゃー!

やっと終わりました~~~~~!




……盛大に遅くなりましたがorz




 日曜日辺りにはなんとか掲載できるよう土曜日はしゃかりきで一日中机に向かっていたのですが、もう泣きたいくらいに間に合わなくて; その上、職場の送迎会がいきなり入ってしまって、「小説が~;」と半分くらい泣きながら出席いたしました。。。だって開始21時からって…! いくら義理とはいえ本当に出たくなかったですよ(-_-;) 
 しかも飲み屋の(「魚民」とハッキリ言ってしまうゾ!)用意された部屋の冷房が壊れていたらしく、この残暑厳しい折に40人くらい集まっているのになんじゃそりゃー! と怒り心頭。
 ただひたすら暑いー暑いーと言い続けて過ごしておりました。飲み放題だったけど、飲む気にもなりゃしねー;
 ねえこれガマン大会? 何かの罰ゲーム? と周囲の人たちとうんざり気味に言い合っておりました。。。

 それはさておき、自分担当週、まずは第一週が上がりました。
 うわーんうわーん(:_;) いさなさんお待たせしました~! 
 とにかく時間がない→小説が上がらない→いさなさんごめんなさい; という図式で頭の中常にぐるぐるでした;
 いさなさん担当週が本当に物語の冒頭部分でしたので、あまり物語として進展せず、ラズリの周辺話とか、ティーナのラズリへの気持ちとか、カレンとの仲直り、なんてーのを主軸に書いてみたつもりです♪ 
 こんなところで自分の趣味大爆発させても仕方がないんですけど;
 それでもいさなさんにお許しをいただけたので、脳内妄想大爆発!させて書きましたですよvv
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 「悪いけど…」
 ティーナとカレンを前にして、ラズリは重たいためいきをもらした。
 「そこ、のいてくれない? 通りたいんだけど」
 「え、えっと」
 「そうよね。ごめんなさい」
 ラズリにそう言われ、慌てて二人は彼に道を譲る。
 するとラズリは軽く頭を下げ、小声で「失礼」と二人の間を割って通り過ぎ、そのまま普段通りのすました表情でいつも自分が座る席を目指した。
 そんな彼の背中を見送り続けているのがどうにも耐えられなかったのか、まず最初に図書館を飛び出したのはカレンの方だった。
 そしてさほど間を置かず、ティーナもこっそりとその場から逃げるように身を引き上げる。
 自宅謹慎を解かれ、一週間ぶりに姿を見せたラズリの姿をこうしてずっと見ていたい気持ちはやまやまだったのだが、図書館内にいる他の生徒たちの、一斉に自分に向けられた好奇な視線にさらされることにはとてもじゃないけど耐えかねて。


** ** **



 「ラズリ・マーヴィ! やっと帰ってきたのかよ、この問題児」
 「おまえ、帰ってきたならさっさと顔見せろよなこのヤロー」
 「ずっと心配してたんだぜ」
 「やあ。トッドにテオ、それにカーツもいたのか」
 ラズリが席に腰掛けると、それを目当てとばかりにどやどやと数人の男子生徒が押しかけて群がった。
 「ベンジャミン、マシュウ、アーノルド…。みんな久しぶりだな。元気だったか」
 「おいおい、そりゃオレたちのセリフだろ? なあみんな」
 「そうだな。でもま、あいさつはそれくらいにしとけよマシュウ。ラズリにあのことを言わなくちゃならないだろ、あいつのさ」
 「そうとも。カーツの言うとおりさ。…どうする? ラズリ。今週の試験の首位はレガだったぜ?」
 「レガ? …ああ、あのビン底眼鏡の坊ちゃん刈りのガリ勉か。いつも僕の下で毎回二番の常連だろ。それで? 彼がなんだって」
 ラズリの頭の中で一人の男子生徒の顔が浮かんだ。
 試験の結果が廊下に張り出されるたびに我先にと順番を見に来ては、ラズリに向かってさんざ悪態をつきまくる彼。
 やれ、不正を働いて点を稼いでいるんじゃなかろうか、先生方に媚を売って点数を操作させているのではないかと疑い、さんざんいやな目に遭っていたのだった。
 「あいつ、性懲りもなくクソ生意気なこと抜かしやがってよお。しょせんおまえなんざ帰ってきたって、授業の遅れを取り戻すのにたぶん半泣きでヒイヒイ言っているのが関の山だろうってサ」
 「だから、来週もちょろいもんだって豪語してたぜ。どうするラズリ、ちょっくら校舎の裏に呼び出してオレたちでシメといてやろうか」
 「別に。そんな必要はないよ」
  ラズリは実に涼しい顔でマシュウやアーノルド、ベンジャミンたちが口々に寄せる報告内容を一蹴した。
 「ま、せいぜい束の間の勝利に存分に酔いしれるがいいさ。僕も今だけなら、心から彼に祝いの言葉を餞として送ってもかまやしないし」
 「そ、それじゃラズリ」
 目を輝かしてテオが身を乗り出すと、ラズリは余裕しゃくしゃくの笑みを唇に浮かべると、彼らの顔をざっと見渡した。
 「彼には悪いが来週の試験、首位はおれがいただくよ。家にいた分、たっぷり自習時間があったんでね。かなり先まで一人で勉強を進ませてもらっていたから、その復習の意味で今週の授業は全て受けるつもりだ」
 ひゅう。少年たちから口笛が飛ぶ。自信満々に言いきったラズリに、彼らは「それでこそラズリだ」と言わんばかりに彼の肩をばしばしと叩きだした。
 そしてさらに「絶対ヤツの鼻を明かしてやれよ」と彼に対して期待のまなざしを向けると、さらにラズリは唇の端をにっとつりあげて勝ち誇ったように断言するのだった。
 「…まあ、見てなよ。廊下にテストの結果が張り出されたら、地団駄踏んでくやしやがるのはレガの方だからさ」


**  **  **
 

 ティーナは図書館を出た後、当初まっすぐ寮の自室に帰ろうと思い立ったが、いつの間にか足の向きは人気のいない時計塔に続く階段を目指していた。
 女子寮のティーナの自室は三人部屋。同じ年頃の少女たちと過ごす日々の暮らしは、親の目を気にせずのびのびと好きなことができる反面、特に何を思うことなく一人静かに呆けていたい時にはどうしたってえらくかまびすしい。
 そんな折、ティーナがふと学校の中で見つけた自分だけの秘密の場所がここだったのだ。
 ティーナはいくつもの教室が居並ぶ廊下から道をそれ、ほとんど誰も訪れることがいない、ひっそりした空間の中に足を踏み入れると、階段の踊場付近までそっと昇りつめ、そこでゆっくりと腰を下ろしすのだった。
 「…なんでこんなことに、なっちゃったんだろ」
 階段に腰を下ろしたティーナは誰に聞かせることなく、ぽつりとつぶやく。ただの、独り言。
 けれど頭の中をわんわんとせわしなく行きかうのは、先ほどのカレンの剣幕や投げつけられた言葉、それにラズリの、自分に対する全く無関心といっていいほどのそっけない表情、そればかりで…。
 入学したての間もない頃、ある日の授業でティーナの隣りの席に座った男子生徒がいた。
 それが、ラズリと初めて顔を合わせた最初だったと、ティーナは今でもよく覚えている。季節が移り変わり、学年が上がっていっても、そのことだけは鮮烈に彼女の記憶の中に残っているのが何よりの証拠だった。
 その教師の授業を受けるのは、入学してからはじめてだった。にも関わらず、ティーナはなんと大事な教科書を持ってくるのを忘れてしまったのだ。
 やだ、どうしよう…。
 昨夜、ベッドに入る前に忘れないようにと、今日の授業で使うものをきっちり机の上にそろえておいたはず。
 なのに、同室の女の子たちと夜っぴておしゃべりに興じていたせいか少し寝過ごしてしまったのだ。
 いつまでも何をやってるのティーナ、遅刻しちゃうわよ。早くティーナ、早く。
 そうひっきりなしに急かされては、ろくに確かめもせず取るものをもとりあえず部屋から出てきてしまったのが災いしたのだろう。彼女のカバンの中にはかろうじて昨日の授業で使った教科書とノートと筆記用具があるだけだったのだ。
 そんなティーナの困った様子がいかにもあからさまだったので、隣の席の男子生徒は見かねたのだろうか。ラズリは何も言わず自分の教科書を彼女の方にすっとずらしてよこしたのだった。
 驚いたティーナはちらとラズリの方に視線を向ける。授業中の手前、声には出せなかったものの、「いいの?」とうかがうようなそぶりを示すと、ラズリは彼女に応えることなく、すました表情で前を向いたままだった。
 「では、次。ティーナ・アルトゥン」
 急に教師から自分の名前が呼ばれ、ティーナは慌てて椅子をがたんと引いて立ち上がった。
 教師はティーナに授業に関する事柄でいくつか質問をよこしたが、それら全てが彼女にとってはわからないことだらけだった。
 「あの…その…」
 「どうしましたか? 先ほど私が話したばかりのことについての確認ですよ? まさか授業を聞いてなかったのですか?」
 教師に叱責され、とたんティーナはかあっと頬を赤らめさせた。当てられてそれに答えられない恥ずかしさよりも、授業を生半可な気持ちで聞いていたことの方がよっぽど恥だと感じたようだ。
 すると、またしてもラズリから助け船が出された。ラズリはさらさらと解答をメモ書きして起立したティーナの手にそれを握らせてやるのだった。
 「…! ええ?」
 「いいから」
 相変わらず彼女の方を見ずにラズリが小声でそう促す。それが功を奏したのか、ティーナは手の中で丸められたメモをそっと開くと、下目づかいにちらちらと視線を落としながらたどたどしい声で答えを言っていった。
 「…よろしい。どれも正答です。ただし」
 教師はうなずぎながらもちらと上目遣いにティーナを目線を送った。
 「今度は助言なしで一人で答えるように。いいですね? ティーナ・アルトゥン」
 そう釘をさしながらも「よしとしましょう」と教師は彼女に着席を許した。
 ティーナはやっと安堵して席に着いたものの、その後も何故か上の空のままで気がつけばもう終業を告げる鐘が鳴り、生徒たちはがたがたと席を立って次の授業のために教室を移動していたところだった。
 「あ、あのぉ」
 ティーナは隣りにいた彼が教科書をしまって立ち上がったところにそう声をかけた。
 「さっきは…ありがとう、助けてくれて」
 おずおずとそう礼を言うが、彼はやはりあまり表情を変えずに「別に」とそっけなく言い放ち、そのままティーナの前から去っていくのだった。
 するとそれと入れ代わりに今度は女の子たちがわっとティーナの周りに集まってきた。
 「ねえねえ、あなたラズリと親しいの?」
 「え? ラズリ、って…?」
 「何よあなたの隣りに座っていたでしょ時間中」
 「ラズリ・マーヴィのことよ…! 今年の新入生の中ではダントツの超がつくほどの有名人だわ。知らないの? 入学試験、ほぼ満点で突破したっていうウワサの彼じゃなあい」
 「うそ…。ほぼ満点だなんて。それって、ありえな…」
 ティーナは女生徒たちの話を耳にし、驚きのあまり目を見開いてしまった。
 志願者が多い上に選抜基準の厳しい王立魔法学院の入学試験だ。毎年、不合格者が大量に出る上に、浪人者もかなりの割合で多いといわれる。それに実のところ学科試験に関してはティーナも水準ぎりぎりで、不本意ながらも多少の縁故、宮廷付き薬師たる父の名を持ち出して使わざるをえなかったほどだ。
 「うそじゃないわよお。過去にも指折り数えるくらいしかいなかったって」
 「あなたそれに、ラズリに答えを教えてもらっていたでしょ」
 一人の女生徒にそう指摘され、ティーナは先ほどの一件を思い出し、ついかっと頬を赤らめていくぶんうつむいた。
 「ずいぶんいい度胸ねえ。あなた知らなかったみたいだけど、ここじゃね、先生に指されて答えられなかった人も、その人に答えを教えることもいけないことなの。両方とも罰則行為に当たるのよ?」
 「そうよお。先生が見逃してくれたから助かったようなものだけど、あれをきっちり報告されたら一発で反省室行きよ。たぶん、そうね百行書きの罰くらいは受けるかしらね」
 「そのことをラズリが知らないはずがないのに…! なのに、なのによ、ラズリったら…!」
 「きゃー! もうあたしダメぇ。あのね、あたしね入学式の時からずっと気になっていたんだ、彼のこと」
 「ううん、わかるわあ。ほんっと、彼ステキよねえ。カッコいいわよねえ」
 「顔ヨシ、頭ヨシ、体ヨシの三拍子だもんね! ダントツの人気よ。上級生にもファンが多いって」
 少女たちはティーナのことなどもはや眼中になく、もっぱらラズリの話題で盛り上がっては黄色い声をあげだしはじめた。
 ラズリ・マーヴィ…か。
 ティーナは先ほどのことを思い出していた。無愛想なまでにそっけない態度。「ありがとう」と礼を告げても、顔色ひとつ変えなかった彼。
 だけど……。助けて、くれたんだあたしのことを。もしかしたら、自分も罰を受けるかもしれないってこと、知っていたのに。
 その日以来、ティーナは気がつくとラズリの姿を見分けて目で追ってしまう自分に気がついた。
 どんな時にいても、大勢の男の子たちの姿の中に混じっていても、ラズリの姿だけは自然に視界に入ってくる。
 まるでそこにだけスポットライトが当たっているかのように、ティーナにはラズリが光り輝く存在に見えるのだった。
 でも彼とは、あの一件がきっかでじょじょに打ち解けて親しくなるどころか、同級生として朝夕のあいさつすら頻繁に交わし合うことなどほとんどなく、相変わらず互いに遠い存在のままだった。
 それでも、ティーナはラズリと同じ教室で授業を受けたり、彼が自習をしている図書館にいるだけで、何故か嬉しさを感じたり、自分がちょっぴり幸せな気分にひたっていることを、無上の喜びに感じて仕方がなかった。
 廊下に張り出される週の定期小試験の結果が張り出される度に、下から数えた方が早い自分の名前を探すより、まずラズリの名前が一番最初に書かれていることを確かめ、それを見て安堵することもちょくちょくで。
 その気持ちが、もしかしたら他の男子生徒に対する気持ちと異なるのではないかと思うようになったのは、誰でもない彼女に、親友とも呼べるほど仲の良い一の友、カレンに「ラズリっていいと思わない?」とこっそりと耳打ちされてた時だったのは皮肉としかいいようがないだろう。
 でも…。だけど本当にあたし、ラズリと会ったのはあの時がはじめてだったのだろうか。
 ティーナはラズリの、空の色をそのまま宿したような青い瞳の持ち主を、かつてどこかで見たような気がしてならなかった。
 それならいったい、いつ、どこで?
 揺るぎようのない真実とばかりに思い込んでいたティーナの記憶に、かすかにゆらぎが生じた結果、芽生えたささいな疑念。
 それは前の学期間の長期休暇中、ティーナが自宅に戻った際、父から現王ジェラルド陛下の身体のご様子が最近とみにかんばしくないこと、そのために皇太子であらせられるラズウェルト殿下の王位継承が、十八才の成人を前に急がれるかもしれない、ということが国政に関わる者たちで形成される元老院内の議題として何度も持ち上がっているということを聞いた直後だった。
 その時、何故か急にティーナはラズリのことが思い出されたのだった。
 …あれ? ちょっとラズリって…ずっと前にも会ったことがあったんじゃない? それに誰かに似てなくない?
 そう思ったのも束の間、だからといってティーナはラズリにいつ会ったことがあるのか、また似ているというのは誰を引き合いにしてそう思ったのか、自分でも言い当てることはできなかった。
 そしてどうして、父が王や皇太子殿下の名前を出してきた際に、彼のことがふっと思い出されたのも。
 ティーナはそれ以後、学院内でラズリの姿を見かけるたびにいっしょうけんめいそのことを思い出そうとしているのだが、それらは全てことごとく徒労に終わっていたのだった。
 だめね、やっぱり。あたしすぐ忘れっぽい方だからなあ。小さかった時のこともみんなぼんやりだもんね。こんなんだから、薬草学以外はからっきし、なのかも。特に魔法史みたいな学科の詰め込み暗記ができない性質だし…。
 そう思い、あきらめを入り混じらせつつも、ティーナはなおも小首をかしげながら、懸命に記憶の糸をたどろうとするのだった。 
 

** ** **



かちゃり。ラズリが寮の自室のドアを開けると、その視線の先に制服姿の少年の姿を目にとめた。彼はベッドの上で仰向けに寝転がって何することもなく、ただのんべんだらりと休んでいたのだった。
 「よぉ、ラズリ。やっと帰ってきよったんか。まったく、何やらかしてくれるんや。ホンマ心配させやがっておまえは」
 彼はラズリが部屋に入ってくるやいなや、表情をぱっと輝かせてがばりと跳ね起きた。
 後ろでひとつにたばねられるほどの、ばさりとした長めの黒髪に褐色の肌。左耳にだけつけた色とりどりのイヤーカフス。
 シャツのボタンは上から三番目くらいまで開け、ゆるやかに結んだタイがかろうじてひっかかっている、という具合にかなり着崩したラフなスタイル。
 それはしゃっきりと折り目正しくしわをのばし、シャツのボタンを上から下まで全て留め、きっちりとタイを襟元に結んでいるラズリとはまるで好対照なほどだった。
 彼がラズリの帰寮を喜び歓迎する一方、しかし当の本人はそれには応えず、ひそかに眉根を寄せてためいき混じりに彼を軽くたしなめる。
 「…アガシ。そこ、僕のベッドなんだけど?」
 「お、そうやったか。わりぃわりぃ。かんにんな。おまえがおらんと、なんかどっちかわからんよってつい、な」
 「…ホントかよ」
 ラズリは彼のいいかげんな言い訳にいささか疑いを持ったが、それもいつものこととあきらめてさっさと受け流し、そのまま後ろ手でぱたりとドアを閉め、すたすたと室内に進み入った。
 「ん? 何か言ったか?」
 「いーや、何にも。それよかアガシ、僕のベッド、ちゃんとシーツをのばして直しておいてくれよ。今日からまたこの部屋の住人だ。よろしくな」
 「おう。…とと。それよかラズリ、聞いたでぇ」
 アガシ――アガシ・アズラット・ハーディーンは何やら意味深なにやにや笑いを浮かべながら、ラズリのそばにつつっと寄っていった。
 西の砂漠の民の部族出身であるアガシの口調は、主に都市部で使用される公用語とやや異なるお国訛りがあった。
 「ったく、おまえも隅に置けないやっちゃな。普段、女の子になんか興味ありましぇーんって顔で取りすましているヤツに限って、すぅぐ色恋沙汰に巻き込まれて渦中の人になるんだからよ」
 「何のことだ」
 無愛想な口ぶりで自分の机の上に図書館から借りた本や教科書の類をばさりと置く。
 するとアガシはラズリの机にひょいと腰掛けるとその中の一冊を無造作に取り上げながら、手持ち無沙汰よろしくぱらぱらとページをめくっていった。
 「またまたぁ。とぼけやがってこぉの色男ぉ。さっき図書館でちょっとした見ものやった、ちゅうウワサで既に寮内がもちきりやでぇ。あーあ、当の現場で見たかったなそのシュラバ場面。さぞかしおもろかったやろ」
 「…ああ、あれか。別に大したことじゃないよ。むしろこっちの方が被害者だな。迷惑極まりない」
 「うわ、ひでぇー! なんやその淡白さ! あんまりにもかわいそうやん、彼女たち。おまえ、それじゃファン激減するでぇ」
 「ああ、それこそ願ったり叶ったりだね。かえって周囲が静かになっていいよ。これ以上うるさくされたらかなわないからね。第一、僕が頼んで女の子たちにキャーキャー騒いでもらいたいわけじゃない。僕の勉強のジャマになるものはこれっぽっちも歓迎したくないな」
 「あいかーらず堅物やなあ。そんなんやから女の子の友達なんてだーれもおらんのや。さみしーやっちゃなあ」
 「ほっとけよ、人のことは。それを言うならおまえこそどうなんだ」
 「あん…? わいか? わいにはいつでも誠実第一や。女の子にはめっちゃやさしー紳士やで。せやからうちのクラスはもとより、学院内にゃぎょーさん仲良しの子がおるやろ」
 目線を宙にさまよわせながら、ひのふのみぃと指折り数えるアガシ。彼の頭の中には数ある女の子たちの顔が浮かんでいるのに違いない。
 嬉々とした表情を浮かべているアガシに向かって、ラズリは冷たくぴしゃりとたきつけた。
 「おまえのはただの八方美人なだけだろ」
 「お、おま…! な、なんだよ…! わいがいつ何をしたって言うんじゃい」
 「伝説の男だからな、おまえは。何せうちの学院の生徒の中では史上一の女タラシという評判の異名まで持つ」
 「おいおい、ラズリ。聞き捨てならねーなそれ。わいはいつだって本気やったで」
 「はんっ。忘れたとは言わせないぞ張本人のくせして。だいたい入学早々、ほとんど顔も知らない同級生はおろか学年を超えて女生徒に声かけて気を引きまくって、三股も四股も、五股どころか六股した挙句、独身の美人教師まで抱きこんで、果てはけっきょく面倒になって全部ご破算にしちまったら一人も残らなかったじゃないか。今のおまえに群がる取り巻き連中は、その過去をみんな知っているから必要以上に近づいたりしない。手ひどい火傷を負いたくないからな。だから、ただ大勢いる友達の一人としかお前を見やしない。おまえだってそのことをわかってるんだろう。そうじゃないのか?」
 「…人の古傷に塩をぬりこみやがってコノヤロー」
 アガシは件の事件についてこれ以上ラズリをつっつくと、かえっていらぬ反撃がラズリから自分によこされることに閉口し、即座に話題を変えることを思いついた。
 「んで? いったい一週間も家で何してはったんやおまえ。確か王都だったな、おまえの家があるの。みんな大事なく変わりなかったか?」
 そもそも話を振ってきたアガシ本人によって、今までの会話の流れが全てうやむやにさせられたことに気付いたラズリは、半ばあっけにとられたが、まあそれも彼のことだし、と妙に納得してそのまま黙っていることにした。
 粘着質よろしく、ねちねちと話を後々まで長引かせず、きっぱりと一切を絶ち、手を引くさまは、女の子たちとのつきあいをいっぺんに断ったその一連の顛末にもそっくりだった。
 それは多分に彼の基本的な性格にもよるのだろう。しかもその得な性分のおかげで、彼は別れた彼女たちの一人からも、恨まれたりあとくされを残されたりなどはいっぺんもなかったのである。
 「別に。みんな変わりなく息災だったよ。父さんも母さんも姉さんも。上の姉さんは外国に嫁いでいるからどうなのか知らないけど」
 「そうか。ならよかったな。ほら、おまえ学期が変わるごとの長期休みも全く帰らねーでいつも寮に居残り組だろ? ほなら袋さんや親父さん喜んだやろ、謹慎処分とはいえ、久しぶりに帰宅したんだもんな」
 「…喜ぶどころか」
 くっと咽の奥を鳴らすようにラズリは苦みばしった笑いをこみあげさせながら吐き捨てるように言い放つ。
 「かえって大目玉をくらったよ。謹慎処分だなんて、まったく我が家の恥だってね。挙句の果てには親父の許可なく部屋から出てくるなって言われたし。食事もみんなと一緒に取らなくてもいいからって毎食運ばれてね。ほぼ軟禁状態もいいところだった」
 「お…。おいおい、マジかよそれ」
 淡々と告げるラズリの帰宅後の様子にアガシは驚きのあまり目を見張りながら、持っていた本をぱたりと閉じて机上に戻した。
 「いや、ったく、ひでえ話やなあ。まあ、確かに帰宅理由は威張れたもんじゃねーけど、本来なら褒められてしかるべきだぜ?」
 そう言いつつ、アガシはやけに同情をこめたまなざしを浮かべるとラズリの肩をぽんぽんと軽く叩いて少しだけ声をひそめた。
 「…未だかつてどんな名だたる魔法使いでもついぞ成し得なかった二頭の飛竜の同時捕獲に成功したんやでおまえは。まだ学院の生徒の身分でありながら、や。せやから、処分の内容はともかくおまえもよくやったとねぎらわれこそすれ、いくらなんでもそりゃねーだろって気はするが…」
 「仕方ないさ。何せ不肖の息子だからね、自分は」
 ラズリは自分に寄りかかり気味になって肩に置かれたアガシの手を邪魔くさそうに軽くはらうと、やや自嘲めいた口ぶりで先を続ける。
 「そもそも家族中の反対を押し切ってこの学院に来たこと自体が責められる要因なんだ。そんな人たちにことさら申し開きしたとて何になる? こっぴどいお叱りが通り過ぎるのをただ黙って耐えて、時間が過ぎ去るのをひたすら待つのが賢明ってもんだろ。争いを長引かせても無駄に体力を消耗するだけだからね。放っておかれるならそれはそれでいいさ。それならば一人で勉強でもしていた方が、よっぽど有意義な時間の使い方だ」
 「…はー」
 アガシは深くためいきをついた。ためこんでいた自身の思いを吐き捨てるかのようにずらずらと並べ立てるラズリにこれ以上自分は何をかいわんや、と思いながら。
 「はん、つくづくおまえにゃ同情すらぁ」
 「それはこっちの台詞だよ。アガシ、君だってそうじゃないか」
 「んーん、わいか? まあ、んなこた気にせんどき」
 アガシはそう言い、にっと唇をつりあげさせた。
 しかしラズリは彼の言うことを受け流さず、まるで自分のことのように躍起になって言い募った。
 「歴代の偉大なる魔法使いを世に輩出した経歴のある君の部族からは、長子の身分じゃないとこの学校の門をくぐれないんだろう? それを末弟である君が、家族の大反対を押し切って、授業旅免除の特待生扱いで入学したって言うじゃないか。本当によくがんばっているよな」
 「あっはっは。そないなことでいちいちくそ悩んでおったら、一人前の魔法使いになんぞなれっこないで。それにどーせしゃかりきで勉強したって、試験じゃいつもおまえにゃ負けっぱなしや。万年二位のレガにもな。ほらな、特待生っちゅーても大したこたないやろ?」
 「それだって常に五番以内はキープだ。大したもんだよ。絶対十番まで落ちたことがないなんてある意味すごすぎるくらいだ。他のやつらは先週よくても今週はだめ、次週はさらに落ちて来週はもっとだめかもしれない、そんな連中ばっかりだろう? レガだってああ見えて、時々、十番より下をいったりきたりすることもあるじゃないか」
 「はは、浮き沈み激しいのが常に人の世、ちゅうわけか。まあ、わいの場合は五番から下に転げ落ちたら、そりゃえらいことになるさかいな。それこそ死活問題や。成績不良で特待生の資格剥奪、挙句の果てには放校処分で強制送還やで? 必死になるのも当たり前やな。…それでなくても素行不良だの、制服着用規定違反だのとオおエライ先生方からいちいちい目ぇつけられとるるのに、成績落ちたら即処分決定や」
 「それでも…いいじゃないか。君はこの学校を卒業したら、大手を振って魔法使いとしての道を進むことができる。でも僕は…違う。ここでどんなに優秀な成績を修めたとて、いずれ十八になれば家督を継ぐしか、将来はないんだ。そういう約束を父や母と交わしたからこそ、なんとか入学を許してもらったんだけども…」
 ラズリはアガシから故意に視線を外すと、やるせない重いためいきをつくとともに声のトーンを一段低くしてそうつぶやいた。
 そして、ふいに思い出す。自宅謹慎を言い渡されて、いやいやながらも王都にある我が家であるところの――セルリアン宮殿に戻ったその日の午後のことを。
 そう、ラズリ・マーヴィとは学院の生徒としての仮の姿。彼の本名はラズウェルト・セイルファーディム。この東大陸きっての長い歴史と繁栄を誇る大国であり、天上の天という意味合い持つセレスト・セレスティアン王国の日嗣の皇子、正真正銘の皇太子なのだった。
 

 ** ** **

「お休みの日は小説をがんがん書くぞ!」と思っても、なかなか予定通りにいかなかったりしますよね。予定は未定とでもいいましょうか…。
やまのさん、イラスト拝見しました♪
ティーナはやっぱり女の子らしく☆ラズリは、となりにテルーがいるせいからか、ラズリがアレン王子のように感じてしまいました。
でも、幼さの中に凛とした雰囲気が出ていて王子様の顔ですね。ふふふ。素敵〜(ハートマークを隣に書きたい!)

やまのさんに触発されて、わたしもちょっとイラストなど描いてみました。
シャープペンでノートに描いたので、かなり雑です。

…で、まずはティーナ。


やまのさんのティーナが、ハリーポッタ−のハーマイオニ−を…とのことなので、髪型だけそんな感じにしてみました。ちょっとほわーとした感じがでればいいなあと。

…で、最後にラズリ。


ただの小僧になってしまいました(- -;)
これじゃあ、クラスの女子はキャーキャー言わないぞ。そして王子じゃない。
あ、画像はクリックすると大きくなります。
 今日のお休みは一日小説がんがん書くぞ~!

 …と思っていたのですが(^^ゞ
 母に頼まれ車を出して買い物→お昼食べて帰宅→なんとなく疲れてお昼寝→夕方→お夕飯→…そして今に至る;
 といういつもの流れで気がついたらこんな時間。。。
 ごめんなさい今からがんばって書けるところまで書きます(-_-;)

 そんなこんなで新しい動きが何もないのもなんなのでこんならくがきなんぞでも…。



→左がヒロイン、ティーナの感じ。
 ちょっとヴィジュアル的にはハ○ポタのハーたん(笑)を意識。
 ちゃんと描くとなるとまたキャラの変化はあろうとは思いますが、ラフではこんな具合でしたー。

 右はラズリの同級生であり寮の同室生(笑)名前はまだない。。。
ラズリよりちょい軽めなキャラというか、やんちゃさの残る少年、といったところにしたいのですが、何ぶん画力こんなものなのでうまく描けなかったかなあ; 
 これもまたラフというかちょろっと描いてみた程度なので、もちろん確定ではないです。名前も考えなくちゃ!




→右がラズリです(笑)
 素性は王族という整った面立ちでありながら、少年らしさを全面に出した雰囲気が我ながらよく描けたと思うておりますが…(^^ゞ
これもまたラフなので決定ではないです。
 魔法学院の制服っぽくマントでも描いて見ようかと途中まで(笑)

 こうしてキャラ絵を拙いながらも描いてみると、実作するに当たって自分の中にリアルな存在として位置づけられるので、小説でも気が向くとこんなキャラ絵をよく書いていたりします。
 もちろん、ビジュアルが浮かびづらい作品、浮かんでも描けない時もありますから; 全部が全部描くわけではないのですがね。。。

→左は。。。えーと;
 思いつきで描いてみた「ゲド戦記」映画版テルーです(^^ゞ
 実はこのテルーを描いてみようかなあと思い立って、どんどん描き出したらくがきなんですが(気がついたらコミケの申し込みカット以来だわイラスト描くの。。。ええと、もう半月以上も前!?\(◎o◎)/)映画三回観たから大体覚えているかなーと思ったけど、やっぱりウロ覚えだったよ…orz
 どっちにしろ自分キャラになっているのはいたしかたないですが、髪型とか服装くらいもう少し覚えていてもよかろうと思いきや、記憶力悪いね~ぢぶん;

 スキャナあるのに; 出すのがメンドーだったので(をい。でも普段ノパソなので線つながないとならぬのです;)デジカメで直に撮影したものですから、画像があんまり鮮明で申し訳ないですが(^^ゞ
 また機会を設けてキャラ絵とかシーン絵とかちょこちょこと描いてみたいです♪
 いさなさんのラズリ&ティーナも見てみたいなあvv(さりげなくリクエスト。。。)
 
 んではまたです!
今週末にアップ予定と言っていたのに、こんな時間になってしまいました……申し訳ありません。
取り敢えず、「起の章・1」前半アップしました。
冒頭は勢い良く、後半は学園ラブコメ風(?)を意識してみました。
誤字脱字は確認はしたつもりですが、こちらも後で改めて確認します。
こんな展開になってしまいましたが、やまのさん「起の章」後半をよろしくお願いします。

そして、このリレー小説を読んで下さった方へ。ありがとうございました。
もし感想などいただけたら嬉しく思います

それでは、お風呂に入ってもう寝ます。おやすみなさい
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やまのたかね&藍川いさな
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