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毎度長らくお待たせしております、藍川いさなです。
今回は2部構成ではありますが、四回に渡って載せていきたいと思います。
それでは第1部前編となります「結の章・3 part 1」をご覧下さいませ。
今回は2部構成ではありますが、四回に渡って載せていきたいと思います。
それでは第1部前編となります「結の章・3 part 1」をご覧下さいませ。
「……ひとつ、教えて欲しい」
「何でございましょう殿下」
ラズリの青い瞳がレドナを真っ直ぐに見据える。小さく息を飲み込んでからラズリは問い掛ける。
「もう、人間だけでは………魔族に太刀打ち出来ないというのか?」
竜族に助力を求めなければ、もう人類に未来は無いと言うのか?
一瞬、レドナの瞳に陰りが宿る。束の間、何とも言いがたい沈痛な空気が流れるが、それでも王太子の質問に答えるのが義務だと言わんばかりにレドナが重い口を開いた。
「恐れながら殿下。その通りでございます」
弁解などひとつもない、簡潔な答えだった。
「…そうか」
聞かなければよかった。わかってはいたがこれでラズリが選ぶべき道は定められてしまった。
勘弁してくれ。正直なところまさにそんな心境だった。一通説明を受けたとはいえ今この世界で起きている状況を把握できたかというと、恐らく多分半分も頭に染み込んでいない。ただわかるのはこのままでは世界は確実に滅亡へ突き進むということ。この国の王太子としてこの国を、人々を平安へ導く責任があること。
―――ティーナ。
知らぬうちに心の中で呟いていた。もう守り石は無くなってしまった。なのに今でも、ちょうど石があった部分がほんのりと温かいような気がする。ラズリは胸元で拳をぎゅっと握り締める。
ちくしょう……こいつら。
これでは狡猾な大人たちの手のひらで踊らされている道化だ。はっきり言ってこの上なく面白くないが。
―――世界が滅んでは、もうお前に会えない。
それだけは確かなことだ。
「……わかった」
神妙な顔つきでラズリの答えを待つ大人たちを一瞥すると苦々しく吐き出した。
「竜を呼べば…いいのだな」
レドナの堅い表情にかすかな安堵が浮かぶ。
「ありがとうございます。殿下」
レドナに続いてディーン…いやケインまでも膝を折り、床に擦りつけんばかりに深々と頭を垂れた。
「さあ皆のもの、殿下の御前へ」
待っていたかのようにレドナくぐもった声で言い放つと、周囲の光景が熱せられた空気のように揺らめいた。一瞬、眩暈を起こしたかのようでラズリは目を瞬かせるが、空間から滲み出た黒い影が人の形になるのを目にして思わずぎょっとした。
まず現れたのは物腰の柔らかそうな栗色の髪の青年がひとり。鋭い眼差しをした背が高い黒髪の男性がひとり。そして、ふんわりと長い黒髪を身に纏わせた女性が現れた。
………ティーナ……!
いや、違う。面差しは似ているが彼女は間違いなくラズリよりも年上だ。思わず声を上げそうになったが寸前のところで踏みとどまった。呆然と立ち尽くすラズリの前に姿を現した三人は、レドナとディーンにならって次々と膝を折った。
「この者達は私達の同志となる者です」
レドナが紹介すると、まずは黒髪の男性が深く頭を垂れる。男性は年の頃は三十代後半から四十代くらい。黒髪と銀色にも見える灰色の瞳は野生の獣のように鋭かった。
「突然御前に馳せ参じたご無礼をお赦し下さい」
男性は意外にも柔らかな低い声で語り出した。
「……赦す」
ラズリは唾を飲み込んで相手に名乗りを上げることを許可すると、男性はさらに深く頭を下げた。
「私はこの学院の理事を務めておりますギルフォード・ウィノーラと申します。隣りの者は宮廷付き魔法使いのクリフ・アーヴェレ。同じくアニス・フォーガンです」
栗色の青年とティーナを思わせる風貌の女性が恭しく頭を垂れる。
「ウィノーラ……?」
学院長と同じ姓を名乗る男性を怪訝に見下ろすと、レドナがくすりと笑みを零した。
「申し訳ございません殿下。この男はどうも言葉が足りませんで。彼は学院の理事長であり私の配偶者。クリフ・アーヴェレはディーン・ジローラモことケイン・アーヴェレの弟君。アニス・フォーガン、彼女もまた宮廷付き魔法使いのひとりで、殿下のご学友ティーナ・アルトゥン嬢の従姉君に当たります」
なるほど道理で似ているはずだ。ついつい目線がアニスへ向いてしまうが、ケインが何やら面白そうにニヤニヤとしているので無理やり視線を引き剥がした。
「なるほど」
動揺する己の心を誤魔化すように軽く咳払いをする。
少し冷静になってみれば、アニスとティーナがそれほど似ていないとすぐに気づく。ふんわりとした長い黒髪のせいで、似ているように思うだけだとも。ティーナのような甘く柔らかな雰囲気はなく、凛とした表情から彼女の気質も伺える。そういえば時折見せるティーナの表情と重ねられないこともない。あと四、五年もしたらティーナもきっと……。
……おい、いい加減にしろ。
思考を中断して、いちいちティーナの面影を追い求めている自分に叱咤する。
誰だ。こんな人選をしたのは……!
アルトゥン家の縁続きといえば血筋的にすぐれた魔法使いが出てもおかしくない。たしかに彼女は優秀な人材なのかもしれないが、よりによってこんな時にティーナとよく似た人間を連れてこなくてもいいではないか。恨み言を吐きたくなるが、今はそんなことを気にしている場合ではない。
「で、儀式はいつだ」
「明日の夜明け前から始めたいと存じます。詳細については後ほどケインから説明を」
ケインと言われて、ああこの男の実名なのだと思い出す。父母の命だから仕方がないとはいえ、偽名まで使って学院に潜入していたとはまったく食えない男である。ラズリが険しい目をちらり向けると、ケインはにこりと笑みで受け止めた。
「それでは殿下。こちらで作戦会議といきましょうか」
何もかも見透かすようなこの男の言動が気に食わないが、そうも言っていられない。
「……いいだろう」
挑むようにラズリが答えると、ヴン……と再び視界が揺らいだ。雑多とした書斎から大きな円卓だけが置かれた空間に変わった。
「さあ殿下」
レドナに促されて円卓に用意された上座に自ら腰を降ろす。ラズリが着席するのを見届けると、他の五人も続いて席についた。
ぐるりと共に円卓を囲む者達を見渡した。どう見ても自分は若輩者にしか思えないとラズリは思う。いくら竜から力を分け与えられたからとは言え、恐らくこの者たちの方が力も経験も遥かに上だ。だからと言って己を過小評価などするばずもないが、貫禄のある魔法使いに囲まれて怖気づかないかと言えば嘘になる。
ずしりと重たいものが肩にのしかかってきたように感じるのは、恐らく気のせいではないのだろう。
竜を召喚し、国を、世界を救うなど……本当に俺にできるのか……?
誰でもいい。俺にそんな大それたことが出来るのか教えてくれ。胸倉を掴んで問い質したい衝動に駆られる。しかし。
「ケイン・アーヴェレ。説明を」
思いを振り切るようにラズリは言い放つ。
もしかして父上も同じことを思っていただろうか……?
二十年前、魔族からの侵略を防ぐために戦った父は、一体どんな思いで戦っていたのだろうとラズリは思うのだった。
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物語が動きはじめましたネ♪
わーい!
いさなさんのル・シェルがはじまりましたね!
あいかーらずラズリの俺さまっぷりが(いや皇子さまだからさ;)心地良いですvv
王家の血筋を引いている者のみが所有する、若くしても存在感があるその気高きカリスマといった辺りが~。
そして事あるごとにティーナのことを心によぎらせるところも思春期だな~(笑)と思い、とてもほほえましいですvv
そして出現した三賢者ならぬ、レドナさまの仲間たちvv
ティーナの従姉妹のアニスさんが気になっておる私です(^^ゞ
きっと彼女がティーナとラズリの仲を取り持ったりするんじゃないかなあ…とかvv
「…さっきからずっと私のことを見ているけど? くすっ。何か気になることでも…?」
「いえ、別に。そういうわけでは」
「ふふふ。隠さなくてもいいのよ。…私にティーナの面影をしのばせているのではなくて?」
「…!?」
「図星、でしょう?」
「そ、そんなはずあるわけが…。か、からかわないでくださいっ」
「あらあ。いいのに、そんな照れなくても」
…なーんてな(^^ゞ
二人の恋もちょっとは進展しそうかしらvv
って; 今それどころじゃないのにっ。
世界が崩壊する危機に瀕しているのにっ。
つーか、だんだんロミジュリみたいになっていくんじゃないかと危惧しているんですが(いやだー! 二人手と手を取り合って二人の世界で幸せになります、とかは絶対ダメだーっ! …ということであのラストは個人的にギアス25話よりも納得いきませんがな…; つーかあれ生きてるの?二人? と思った実体化でしたが。うーん…うーん、あいまいに解釈するのもイヤなんだよー! だとするとエスカのラストはかなりものすごくがんばった!という決着のつけかたでしたな。。。と、既存作品語られてもねえ(^^ゞ)
何はともあれ、次回も期待しております!
ラスト、本当にラストまでどうひっぱっていこうか、未だに試行錯誤で迷ってばかりなんですが、ケリをつけるのは私ということで♪
ご都合主義だとかなんとか、誰に文句たれられても、いや私はこれでカタルシスを得たい…! という幕引きを望みますvv
やまのさんはどうにもガマンがならなくて、オフの生活がとんでもないことになりかけておりますが、なんとかがんばるー!
いさなさんもがんばって…!
いさなさんのル・シェルがはじまりましたね!
あいかーらずラズリの俺さまっぷりが(いや皇子さまだからさ;)心地良いですvv
王家の血筋を引いている者のみが所有する、若くしても存在感があるその気高きカリスマといった辺りが~。
そして事あるごとにティーナのことを心によぎらせるところも思春期だな~(笑)と思い、とてもほほえましいですvv
そして出現した三賢者ならぬ、レドナさまの仲間たちvv
ティーナの従姉妹のアニスさんが気になっておる私です(^^ゞ
きっと彼女がティーナとラズリの仲を取り持ったりするんじゃないかなあ…とかvv
「…さっきからずっと私のことを見ているけど? くすっ。何か気になることでも…?」
「いえ、別に。そういうわけでは」
「ふふふ。隠さなくてもいいのよ。…私にティーナの面影をしのばせているのではなくて?」
「…!?」
「図星、でしょう?」
「そ、そんなはずあるわけが…。か、からかわないでくださいっ」
「あらあ。いいのに、そんな照れなくても」
…なーんてな(^^ゞ
二人の恋もちょっとは進展しそうかしらvv
って; 今それどころじゃないのにっ。
世界が崩壊する危機に瀕しているのにっ。
つーか、だんだんロミジュリみたいになっていくんじゃないかと危惧しているんですが(いやだー! 二人手と手を取り合って二人の世界で幸せになります、とかは絶対ダメだーっ! …ということであのラストは個人的にギアス25話よりも納得いきませんがな…; つーかあれ生きてるの?二人? と思った実体化でしたが。うーん…うーん、あいまいに解釈するのもイヤなんだよー! だとするとエスカのラストはかなりものすごくがんばった!という決着のつけかたでしたな。。。と、既存作品語られてもねえ(^^ゞ)
何はともあれ、次回も期待しております!
ラスト、本当にラストまでどうひっぱっていこうか、未だに試行錯誤で迷ってばかりなんですが、ケリをつけるのは私ということで♪
ご都合主義だとかなんとか、誰に文句たれられても、いや私はこれでカタルシスを得たい…! という幕引きを望みますvv
やまのさんはどうにもガマンがならなくて、オフの生活がとんでもないことになりかけておりますが、なんとかがんばるー!
いさなさんもがんばって…!