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 ……
 ……

 ――はーいー(=_=)

 何が何だかわからないまま書きなぐったシロモノを上げるのもどうかとツッコミつつ、しかも尻切れトンボでどないなっとんねん! という具合のはしょり方で申し訳ないと思いつつ、タイトルに前編という通りあとちょっと、ちょっと…が書き終わらないだようがあーーー! という叫びもむなしいので;ムリヤリ二つに分けて(part:1、13ページ分の内の10ページ。あと3ページしかないのにそれが書けないというのが情けなし;)とりあえずぶっこみました。

 毎日ねえ、そら必死になって書いてはいるんですよ?
 
 なのに眠たさMAXで時にはキーボードを打つ姿勢で寝落ちて(笑)アカン、こらもうOUTやー! と気分転換と称してギアス同人誌読んだり(ウホッ)サイト巡ったりコミケカタログ見たり…しているとちょっと目が冴えてくるので、再びワープロ開くと…寝落ちる;
 
 これ何の罠、何の罠ですかーーーーっ!( ̄□ ̄;)

 というわけで、ちょっとR15気味に暴走した冒頭部分でございます;(爆)
 いかに最近のやまのさんがどんな傾向のものを読んだり買ったりしているのかが一目瞭然…(無言;)
 まあ、いさなさんの前回の結びに煽られて走ってしまいました(^^ゞ
 あれ? こういう展開を期待されてバトンが回ってきた…んですよね? 私に(誰も何も言ってない自分勝手な思い込みおーいえー!)。
 単にティーナにFor Mensの作品のように(笑)「もぉ、らめえ…!」と言わせたかっただけ、という鬼畜っぷり;
 けっこう愉しいものですねえ!こーゆーのって(爆)
 あんまり萌えないように書いているのは、私の文書技量が足りないからです(涙)

 そして後半、いよいよ壮大な伏線の一部ネタバラシ開始。
 そろそろここいらでなんとか解消していかないと、まだまだ先があるんだからぁ…!(鼻息)というわけで。
 そのネタばらしの部分が大変でない知恵ひねらないと出てこないのですだよ…。

 とりあえずようやっと動いた私の回です。
 7月中には…!という思惑もむなしく8月までもつれこみかと思いますが、ロータス側の方も書きます予定ですのでもちっとおつきあい下さいませ♪

 いさなさん、本当に待たせてばかりでごめんなさい~!
(zaba本含めて!)


 
 ディルナスに唇をふさがれた直後。自身を襲ったそのあまりにも衝撃的な出来事に、ティーナは途端に頭を真っ白にさせて固まる。
 
 どうして、ディルナス様。こんな、こんなことを…?
 
 触れ合った唇のやわらかさ。ほんのりと宿る温もり。
 唇同士の接触、接吻、それ自体が彼女にとって全くの初めてではないものの、だからといって慣れているわけなどない。
 
 なのにティーナはいよいよ感情が麻痺したのか、夢見るような心地良さでディルナスとのその行為に酔いしれ、次第に溺れていった。
 
 そ、そんな、だ…だめ。ダメだってば、こんなことは。いけないんだ、から…。だから――。
 
 いつまでもこうしているわけにはいかない。
 早く、早くなんとかして、ディルナスさまにこんなお戯れなど即刻やめていただかないと…。
 
 ティーナはやっとのことで、ほんのこれっぽっちだが胸の底に残っていた理性をふるい立たす。
 
 「…や」
 
 “止めてください”という意を含みながら、ティーナは渾身の力を振り絞り、抗いを誇示すべく、震える腕をぐいと伸ばして彼から離れようと試みてみる。
 
 だが、そんな彼女の抵抗など、しょせん無駄なあがきなのだと告げるが如く、ディルナスはさらにティーナの肩に背に、自身の二の腕を素早く回すと、自分の身体にぴったりと密着させるように引き寄せていった。
 
 この好機を逃すまいというのだろうか。
 それとも彼の好意を拒絶しようとする自身の身体に、とくとわからせるつもりがあってのことだろうか。
 
 ディルナスにされるがままの状態でぐるぐると思案を重ねても、明確な答えはひとつも紡ぎ出せず、相手にどんな意図が隠されているのかも定かではない。
 
 そんなティーナにディルナスはもっと口付けを深く施していく。まるで彼女の胸の内など手に取るように見透かし、それ以上何も言わせまい、思わせまいとしているかのように。
 
 …あ。そ、そんな…っ。や…あっ。
 
 ひくり。痙攣にも似た、かすかな背の震え。
 どくり。心拍数が勢い跳ね上がり、耳をつんざく。
 
 ティーナはそれまで自身が経験したことがない、制御不可能な衝動に対し完全に臆し、ひるんだ。
 
 しかし、ディルナスはそんな彼女の胸中に起こるさざなみ立つほどの動揺など、わざと露ほども解さない素振りで、さらなる強行を突破していく。
 ずっとむさぼり続けていた唇を、いくばくか離し、いったん彼女をその接吻の呪縛から解放すると見せかけるも即座に攻撃を再開する。しかも先程に比べ、格段の破壊力を持って。
  
 半開きになっていたふっくらと厚みのある彼女の唇を割り、そのきれいにならんだ歯列を無理にこじあけ、口腔内を自身の舌でまんべんなく蹂躙していく。
 
 それに伴い、派生する濡れた音が二人の耳に届く。くちゅりくちゅりと、実に卑猥なる響きを持って。
 
 「…ふ。ぁ…ッ。あぁ…!」
 
 喉の奥から急に漏れだす、まるで自分の物ではないような喘ぎ。知らずそんな声を発してしまい、背中をぞくりといわすティーナ。
 
 身体の芯から湧き上がる熱を持った疼きに、耐え難い律動が走り、胸がぎゅっとしめつけられるような心地さえする。
 
 それは自身を保つだけの理性が悲鳴を上げながら限界を告げている証拠。
 彼女に対する警告音はがなり立て、先ほどから赤いランプをぴかぴかと点滅しっぱなしだったのだ。
 
 ダメ、だめだよ…そんな…。あ、あ…。も、もうっ。ンンッ。ら…らめぇ!
 
 そして、ついに。とうとう彼女の最後の砦が陥落された。
 
 だらり。ディルナスの上衣の袖をつかんでいた手はしどけなく下がり、彼の服に不自然なしわを残す。
 
 がくり。体内から力が抜けていくのをつぶさに感じつつひざが折れ、その身を自身を支えることがもはや困難と成り果てた。
 
 そんな彼女をしっかりと律したのは、その原因を作った張の本人、ディルナスであったことは何かの皮肉だろうか。
 
 彼は地面に伏しかけたティーナの背と膝裏にそっと腕を差し入れ、彼女をしっかりと抱きかかえる。
 
 細身で華奢な彼のどこに、そんな屈強な男性並の真似ができるだけの力が蓄えられていたのか。
 
 現に、彼の腕の中にすっぽりと包まれたティーナ自身すら、はなはだ疑問にも抱くほどだったが、日頃から丹精をこめている庭いじりの仕事をしているせいなのだろうか、となんとはなしに思うのだった。
 
 そんな第三者の視点で客観的なことをぼんやり思う一方、ティーナはもう何の抵抗も示すことはできず、ただただ、ディルナスの思惑通りになすがまま、されるがままだった。
 
 まぶたがとろんと落ちかけ、瞳が潤む。
 眦にうっすらとにじんだ透明な滴は、ティーナを抱く彼の動きにつれ、彼女の頬をつっと伝っていった。
 頬から耳にかけて熱発したかのように色が紅潮し、半開きになった唇から息も絶え絶えなほど呼吸にあえぐ。
 
 そんなティーナの状態は、傍目から見れば欲情に身を窶した末の痴態としか目に入らない。
 例え常識をわきまえた紳士然とした人物であっても、今の彼女を前にしたなら、ごくりと生唾を飲み込み、介抱するという名目でどうにでも好きに弄びたくなる衝動にかられるほどだったのだ。
 
 しかしディルナスはそのような輩とはまったく無縁だとでもいうのか。
 かような状態に陥った彼女でさえ、さもいたわるような微笑を口元に浮かべると、その額に手厚く看取りにも似た口付けをひとつ落とす。
 
 それから静かに囁くように、彼女の耳元へと告げるのだった。
 
 「さあ、行こうティーナ。僕の部屋へ」


♪♪♪



 ディルナスに抱きかかえられたまま、ティーナは屋敷内に戻って来た。

  メインの大階段よりも簡素に作られた離れた場所にしつらえられた階段を上った為か、屋敷内の使用人の誰にも見られずにすみ、そのまま二階の奥まった部屋へと進んでいく。
 
 そして目的の部屋にたどりついたディルナスは器用に扉を開け閉めして、部屋から部屋へとさらに歩を進めさせた。
 
 そしてようやく行き着いたのは彼の寝所。部屋の中央にしつられられていた寝台にそっとティーナを降ろすのだった。
 
 三人が並んでも十分ゆとりがあるほどの大きさを誇る、天蓋付きの寝台。
 それは、りっぱな屋敷に住まう者が使用するものらしく、豪奢な飾り彫りや色彩が施されていた。加えて敷かれている褥も、横たわった身体がふわりと身体の形に沈むほどやわらかく、寝心地はいたく快適だった。
 
 ティーナはディルナスに自身が何をされるのか、朦朧とする意識の下、既に判別がつかなくなっていた。
 
 もう、どうにでもなろうとかまわない。
 そんな捨て鉢な言い草は口にしないだけだったが、事実ティーナは半ばそんな心境を抱きはじめつつあったのだ。
 
 「デ…ディルナス…さま?」
 「…うん? 大丈夫だよティーナ。君は何も心配することない。僕に全てを任せていいからね」
 「で、でも…」
 
 自身の自暴自棄を認めてはならない。
 この流れに身を任せてはいけない。
 
 胸の底のどこかで戒めの手綱が引かれたような気がするのだが、ティーナはただひたすら、はあはあと息をも絶え絶えに苦しげな呼吸を繰り返すばかりだった。
 
 「さあ、落ち着いて。君はまぶたを閉じていていいよ…。もう案じることなど何もないんだから…」
 
 ディルナスは身をのりだし、ティーナの上に軽く覆い被さると、彼女の両まぶたを自身の指でそっと閉じさせていく。
 
 ティーナはさして疑う様子もなく、彼に従順になり身を預ける。
 実際、彼の言う通りだったのだ。
 自然とまぶたが重たくなってきてたまらず、ティーナは目を見開いたままではいられなくなってしまったのだから。
 
 極度の睡魔に襲われ、やがて力も尽き、ゆっくりと寝台に身を沈ませていく。
 そしてとうとうしまいには、完全に彼女がくうくうとおだやかな寝息を立てだしたのだった。
 
 規則正しく胸元が上下し続けるのをその目で確かめたディルナスは、彼女の眠りを邪魔しないよう、静かに身を起こしてそっとベッドの横に立った。
 
 “…それで、おまえは目的を達成したわけか?”
 
 ディルナスの脳裏に内在する例の相手が直に語りかけてくる。彼の耳朶にはリバーヴをかけたかのような歪んだ声がこだました。
 
 「まさか」
 ディルナスは耳の奥で鳴り響く声に対し、さりげなく否定し首を振った。
 
 「こんなささいなことなどほんの手がかり、足がかり。第一段階に決まっているじゃないか。全てのね、とっかかりにすぎないだろう。…まあ、そこで黙って見ていてくれないか。それが君らにとっての主目的となるべく有効判断になるのだろうから」

 「…おまえがそれでいいのなら反論はしない。私の出る幕が今後もなさそうなら、余計な口出しはしないことに限るからな」

 「そうしていてくれるとこちらも大いに助かるよ。――でもね、忘れないでいてもらいたいんだ」

 「何をだ?」

 「僕はいつだって、君らをないがしろにするつもりはない。そのことだけは、誇りを持ってここに誓える。けしてこの身が滅んでも違えることはないよ。――だから」

 一度だけまぶたを伏せ、そしてまた見開く。
 まるで何か重大な決意表明を示すかのように、一方で自身に安堵感を覚えこませるかのように。

 「大丈夫、だよ…? 全て世は事もなく、万事うまくいく。イレギュラーさえ、なければね」

 「そうか」

 最後に付け加えられた彼の一言に、一抹の不安を抱きつつも、その部分を言及することを故意に避け、ディルナスの内側に潜む声の主は淡々と応じた。
 ……さて。お手並みを拝見しようじゃないか。おまえが断言するほど、そう物事はうまく運ぶものか、どうかを。

 「おや」
 「何だ」
 「いや、やけに今日は反応が薄いなと思って」
 「別に。同じだ。普段と変わらない」
 「そうかな。いつもならもっと鋭く僕の言葉尻を押さえて絡んでくるくせに。…ふふふ、どういう風の吹き回しかな」
 「その言葉そっくり返そう。謹んでおまえに進呈してやる。ありがたく思え」
 「それは結構。滅相もない。かえってご遠慮申し上げる」

 ちょっとしたレクレーションのような、軽妙なやりとりでラリーが続いたかと思うと、ディルナスはふっと口をつぐんで表情をゆるめた。

 それを察した声の主は「どうした。思い出し笑いか」と皮肉めいたからかいを示すと、「いや」とディルナスは首を横に振る。

 「そうではないんだ。ただ…」
 「ただ?」
 「愉しいな、と思ってさ。君とずっと長く時間を共有しているのに、なかなかこんなことはありそうでなかったからね」
 「ふうん」

 おかしな奴め、と物言いたげに語尾を濁らせるとそれきり声の主は押し黙った。

 これ以上の問答は無益と判断したためかどうかは定かではないが、いずれにせよ彼も、ここいらが潮時と思ったようだ。ディルナスはその後、黙したまま自身の行動を再開させていく。

 足音をしのばせながら、寝室を出てゆっくりと扉を閉める。
 これで彼女の眠りを妨げるもろもろの雑音はかなり遮断されるはずだ。

 それからおもむろに、廊下との境目である出入り口の扉のそばにしつらえられた細長いタッセル付の紐を軽く引いた。

 りりん。軽い鐘の音が涼やかにその場に響き出してしばらく経った頃、さほど時を置かず廊下を小走りにやって来る足音が響く。

 そして外側からこつこつと扉を叩く音が室内へと伝わり「お呼びでしょうかディルナスさま」と部屋付の召使いの若い女性の声が彼の耳に届いた。

 「すまないね、メリッサ。忙しいところを急に呼び立ててしまって」

 部屋の外から返答しながら、扉をきいと内側に少しだけ開くと、ディルナスは自身の命を舌に乗せて彼女に告げる前に、まずやんわりと一呼吸を置く。

 すると召使いの彼女――メリッサは「いいえ、そのようなことはけしてございません」と首を素早く振った。

 「ディルナスさまのご命じとあれば、我ら屋敷内使用人は疾く、いかようにでも主大事と馳せ参じます故」

 うやうやしく頭を下げる。滅私奉公に身を捧げ、忠義を重んじる旧家の使用人ならではの模範解答の如き殊勝な受け答えに、自身の主は「それは頼もしい」とばかりにえらく上機嫌に微笑んだ。

 そんな主に心からの敬意を表しつつ、さらに出来る配下の身の上であることを強調するかのように、メリッサは自身の方から「して、この度は何用でございますか」と下命を急く。

 ディルナスはそんないたいけなほど一途に自身を慕い、従者としての立場を全うしようとする彼女に「ありがたい。助かるよ」とねぎらいの一言を忘れず前置く。殊更、理解ある主としての心構えを持ち前の性分とするかのように。

 それから、多少声のトーンを抑え気味に話しだす。暗に、これから話すことはさも重要で他言無用とばかりに念を押す形で。

 「奥でティーナが寝んでいる。…さっき外でね、僕の薔薇園の付近で倒れていたところを先ほど見つけてね、ここに運んだんだ。朝の庭歩きのまま、ずいぶん長らく迷っていたのか、はたまたどこぞで転倒したのか…。服に泥や草の汁がしこたまついてかなり汚れていて…」

 そんな彼女の身なりの様子があまりにも気の毒で…とでも告げようというのか。ディルナスはかなり大げさに首を振って「はあ」とためいきを吐きながら、やるせない表情をメリッサに示した。

 「あのまま目が覚めるまでずっと寝かせておくのも、どうもいたたまれないからね…。少し手間をかけて申し訳ないんだけど、彼女の着替えと今着ている召し物とを替えてあげてくれないかな?」

 普段とやや異なる、たどたどしげなディルナスの言葉の端々からにじみ出る、客人であるティーナの身を心から案じるディルナスの態度に召使いの彼女はえらく心打たれたらしい。

 使用人にはあるまじき冷静さを多少欠く、いたく感激した様子を露にし、「はい、かしこまりました」と即座に返答し、誇らしげに顔を上げる。

 「そのようなご用向きでありましたなら、ぜひこのメリッサにおまかせくださいませ。すぐにお召し替えのお衣装の支度をしてまいりますので」

 「そうか。そうしてくれるかい? 君の仕事の手をわずらわせてすまないが…頼んだよ」

 「いいえ滅相もございません。では、少々お待ち下さいませ」

 へこり。いとまを乞う挨拶もそこそこにして、彼女、メリッサは身に着けた真白なエプロンと長尺の紫紺色のスカートの裾をひらりとひるがえし、その場を小走りに去っていった。

 …これで、よし。さてと、お次は。

 廊下をぱたぱたと駆けていく彼女の背を曲がり角まで見届けた後、ディルナスは再び自室に戻るべく、握っていた扉の取っ手を内側に引き戻そうとした。

 その瞬間――。

 扉を閉めようとする彼の動作とは正反対、扉を開こうとする力が働いたのだ。

 その急なことにディルナスは驚きを隠せないながらも、あえてその力点の移行に対し抗うことはせず成すがままに任せる。

 結果、再び扉は廊下側へと開いていった。しかも先ほどよりも、大きく開け放たれたような格好で。

 「…どうかなされましたの? とても嬉しそうですわ、お兄さま」

 にこり。屈託のない笑顔がディルナスの前に姿を伴って現れた。
 するり。扉の取っ手を握ったままの彼の脇をぬって部屋の中へと入り込んだのは、一人の少女。いや、しかしそれは、正しくは小柄で細身の、少女のような容姿をした一人の女性の姿だった。

 「母上――」
 ぼそり。ディルナスはそう一言、口に出すとそのまま固まる。

 彼の前に現れたのはデヴォンシャー家の女主人にして、ディルナスの義理の母親、セシリア公妃、その人だったのだ。

 「うふふ。何か楽しいゲームをされていらっしゃったのぉ? ジェラルドお兄さまったら」

 彼女の歩みが室内の中央まで進んだ辺りで止まり、自然に身体の向きをディルナスへと向ける。

 それに従い、ゆるやかに弧を描くようにしてひるがえるのは、床上すれすれの長さのドレスの裾や、軽くたばねて自然に流した髪の毛。それらが完全に元の位置へと戻る前、後ろ手でドアを閉めつつ、ディルナスはセシリア公妃と正面から相対するのだった。

 「ねいねい、どうぞセシルにも聞かせて。お願いよ、お兄さま。どんなささいなことであっても私にナイショをお作りになられるなんて、とってもいけずですわよ。うふふっ。…さあ、わたくしにも色々お話してくださいませんか。ねえ、お兄さまってばぁ」

 屈託ない笑顔を浮かべ、ころころと鈴が鳴るよな声を響かせながら矢継ぎ早に詳細をねだるセシリア。

 そんな彼女にディルナスはどこかもの悲しげな声音で、低くつぶやく。
 「……もう、いいんですよ母上」

 「え? なあに? 何か仰いました? うふふ。どうかされましたの、お兄さまったらぁ」

 「それ以上はもう…。母上、どうか」

 ディルナスはいったん息を吸い込み、一区切りを置く。
 セシリアはそれが何の前触れかわからないといった風情で、きょとんとした顔つきで口を開けかけ続きを待った。

 「お願いです。どうか、気の触れたフリなどおやめください。わかっていらっしゃるのでしょう? この私のことも、世界が今どうなっているのか、全て何もかも」

 いつになくシリアスなまなざしを自分に対して向けるディルナスに「あら」、とでも言いたげな仕草でセシリアはほんの少し首をかしげる。

 そしてすぐ、唇を細め、弧を描くようにきつくつりあげる。年を重ねても直、美しさが増すその相貌に、それはひどく不釣合いなほど歪んだ笑みだった。

 「…ほほお。そうか、もうおしまいかえ? はん、ちとつまらぬものよのぉ。これでもけっこう楽しんでいたのだがな妾は。芝居とはいえ、ひどく奔放な振る舞いをし続ける生活も悪くはなかったのじゃぞ」

 つんと口を尖らせて揶揄するセシリアに、ディルナスはやれやれと肩をすくめ、「本当に困ったお人ですね」と降参を示す。

 「それは結構。ですが、あなたのお守役を進んで買って出なければならなかったこの私めの立場も多少は察していただきたいものですが」

 言い分はどこかセシリアの行動をたしなめるかのようなものだったが、さりとてそれはあくまでも本心ではなかった。

 何故ならディルナスは、思い切り眦を下げ、その上くすくす笑いを交えながらセシリアに告げていたのだから。

 そんな彼に呼応するかのように、セシリアも目を細めて口元に笑みをたたえた。

 「そうであったの…。すまぬな。悪かった。おまえが妾のそばにいついかなる時であろうとも離れずついていてくれていると思うが故に、つい甘えてしまって」

 「いいえ、そんな。母上が私に謝る必要などは何もございませんので」

 ずいっ。一歩踏み出し、ディルナスはセシリアに右手を裏に返してさしむける。セシリアはその行動の意味を真に理解したのか、同様に自身の左手を表にしたまま彼へと差し出した。

 ディルナスは自分に向けられたセシリアの手を取ると、軽く膝を折り、甲へと口付けを落とす。

 セシリアはディルナスに触れられた箇所に感じた唇の感触に快い心地を覚え、ゆるりと口元をほころばせた。

 「全ての元凶はこの国が、そもそも世界が。だから――」

 一瞬の内に唇を離したものの、まだその手をつかんだままセシリアの顔を見上げつつ、訴えかけるかのようなまなざしを向けるディルナス。

 そんな彼に対し、セシリアはゆっくりとうなずく。その言わんとする内容を自分は正しく汲み取り、いかにも共感しているのだという面持ちで。

 「母上……。それでは」
 「そう、血は血によって購われ」
 「罪は、罰に因りて制裁を」
 「御身、自らの手で下し」
 「粛清を」
 「粛正を」

 次第に熱がこもり勢いを増す二人の口調。ディルナスは再び姿勢をきちんと律し、セシリアと対峙する。

 にこり。二人向き合い、互いの瞳に互いを映し、じっくりとその姿を確かめ合う。

 見つめ合う二人の両の目、四つの瞳は、どちらも真に美しい青の澄んだ輝きを放ち、そのきらめきで周囲を席巻させるのだった。

 「それでは、これでようやく妾の本懐が遂げられるわけじゃな。ええ…?」

 「はい。母上のお望み通り、理想の器を手に入れました故」

 「魔法能力はどうじゃ? それが一番、肝心要なのじゃが」

 「もちろん。あちらの寝所にて休んでおります彼女ですが、既に母上も見知り置きのはずですよね?」

 「ああ、そうじゃったな…。名前は確か」

 「ティーナ・アルトゥン」

 「アルトゥン? ふうむ…。なるほど、それでは」

 「ええ。代々、王室付き専任薬師の任を担ってきたアルトゥン家のご息女です。今は降嫁されたご身分とはいえ、かつては王族の一員であった母上ならよくご存知でいらっしゃることでしょう?」

 「ふ…ん。アルトゥン、か。忘れようたって、そうそう忘れられぬことはできぬ実に忌まわしき名だな」

 セシリアはふっと視線を遠くに彷徨わせたのも束の間。その名に関わる何かが過去にあったとでもいうのか、苛ただしげに親指の爪をぎりりと噛んだ。

 「ティーナ、彼女は王室付薬師・ガルオンの娘にして、巨大な竜の血に連なり、またその特殊能力――特に飛行力に優れた才を色濃く受け継ぐ末裔。…ただ、その力の全ては守り石と化し、本体と離れていますがね」
 ディルナスの物言いにセシリアは一瞬だけ表情を変え、不安を入り混じらせる。

 その力の全ては守り石と化し、本体と離れている、だと…?

 目に見えて表情を曇らせるセシリア。そんな彼女のささいな変化にディルナスはすぐさま反応し、「いえいえ。そう案ずることはありません」と軽く否定する。

 「真か」

 「はい。私は嘘は申しません。母上にだけは」

 「して? 本当に大丈夫…なのかや?」

 「ええ。ただいま私の手足、使いの者にかの守り石を取りにやらせておりますので」

 ディルナスを心底信じていないわけではなかったが、それでも半ば疑いの眼でセシリアがそれとなく打診してみると、当の本人からすぐさま手短に事情が説明され、そこでやっと彼女は表情に安堵の色を取り戻すのだった。

 「――ああ、ちょうどいいところへ」

 「ん? どうしたのじゃディルナス。 何があった。申してみよ」

 「ふふふ。噂をすれば何とやらです、母上。ちょうど今、戻って参りましたよ。私の手足、例の者がここへ」

 怪訝な顔を向けるセシリアに対し、ディルナスはさらりと軽妙な語り口で話題に触れた。するとそのそばから彼らのすぐ近くで空間がヴ…ンと歪みだす。

 「……!」

 セシリアは目を鋭くさせ、ぐっと口を噤み、その異常現象に心なしか身構える。

 しかし一方、ディルナスはそれらをむしろ歓迎するかのように目つきをやんわりとゆるくした。そしておもむろにふっと口元を開き「おかえり。ご苦労だったね」と労いの言葉をかけるのだった。

 ディルナスが声をかけた先の空間の歪み歪みは次第にゆっくりと変貌を遂げ、徐々に人の形へと練成されていく。

 そして、しまいには――。

 「お頭さま。この度は御自らがこの端た女のために奔走くださりましてまこと感謝の至りでございます」

 ディルナスとセシリアの両の眼、四つの瞳にしかと確認されたのは、一人の妖艶なる美女の出現だった。

 長くうねるような巻き毛のプラチナ・ブロンド。白くなめらかなつや肌を覆うのは、露出度が極端に高い衣服。

 そんな彼女の整えられた顔の造作を際立たせるのは、つりあがった目元ときゅっと細い半月を思わせる赤い唇で。

 そう、彼らの前に現れた彼女とは、ディルナスの御身の手足となるべき働きを課せられていた存在、ミランダだった。

しかも彼女はロータス魔法学院での先の戦闘において、ディーンの施した術によって亜空間を彷徨わされていたはずの本体から分かたれた片割れ、半身なのだった。

 「して、例のものは」
 

 「もちろん、ここに」
 命じられるままうやうやしく頭を垂れ、そっと差し出す。

 ディルナスに向けたミランダの手の平の上に載せられていたのは、涙型を模したかのような透き通る小さな石。

 それを見とめてほくそ笑むディルナスは、静かにその石を指でつまむようにして持ち上げると、先ほどからずっと離さぬままでいたセシリアの手をそっと開き、それを握らせるのだった。

 「…さあ、母上。これが例の物です。しかとお受け取りを」

 セシリアはうむと満足げにうなずくと、指を折ってぎゅっと石を握りしめ、自分に対して存分な働きを見せたディルナスに対し感謝と労いの意をその顔に表す。

 「すまぬな。まこと母として不甲斐ない我が身のためにおまえにもたいそう骨を折らせた。心から恩に着るぞ、ディルナス」

 「そんな…。滅相もありません。これまでの母上が受けてきた数々の屈辱と苦しみに比べましたら、これしきのこと何の厭いがありましょうぞ」

 セレスト・セレスティアン王国では建国時より、特に優れた魔法能力を所有しながらにして生を成す王の血を引く娘御、姫御前の存在が記録されていた。

 彼女たちは秀でたその能力を請われて代々、国を守るため由緒正しき御身を純潔のまま臣民らに捧げ、いわば斎ともいうべく存在として迎えられるのだった。

 そのため、手厚い庇護の下、世間は元より王宮からも隔絶された絶対領域ともいえる鎮守の森の奥深くに存在する社にて、御付の側女らのみによって育てられ、清められたその身ごと一生を過ごすことを余儀なくされているのだ。

 ――しかし。だが、約二十年前のこと。

 突如、異界から現われたる魔族の存在が、その規範を覆した。
 土地や人は元より、国も法も全てが奪われ、人の世は終わりを宣告されたかのような阿鼻叫喚の地獄絵図にさらされたのだ。

 魔族らは己が性質が故、本能の赴くまま、国内外問わず破壊と陵辱とを繰り広げ、非道の限りをし尽くしたが、そんな彼らの前に勇敢にも現れたのはジェラルド・セイルファーデム。魔族を討ち、退け、闇に葬り去るために国民の前に立ったセレスト・セレスティアン国の世継ぎでもある若き王だった。

 しかも彼の持つその類稀なる魔法能力の高さは、宮廷付専任魔法使いをも軽く凌ぎ、歴代斎宮の姫の中でも飛びぬけて才覚を発揮した妹御と並び称されるほど。

 これまで幾たびか受けてきた他国からの過度な干渉や侵略行為、はたまた一触即発で戦争勃発となる危険をその辣腕にて未然に回避させてきた功労や功績は計り知れないものだったのだ。

 だが、そんな彼とて、魔族という人ではないモノどもを相手にせねばならないというこの国の一大事に際してはどうにも力及ばず、あわや迫り来る国滅亡の危機に身をさらされ、危急存亡の窮地に陥った。

 そんな折も折、国の宰相らをはじめとし、王宮付の魔法使い、はたまた薬師、騎士団、防衛軍の権力者どもが雁首揃えて打ち出した究極の結論とは――。

 「……王の血に連なる者たちそれぞれに与えられた高次の魔法能力。それらを一つに集約し束ねれば、より最強の魔法能力者がこの世に誕生するはず。そのような考えに及び推測を立てたのだ。竜の力をも凌ぐほどの巨大な唯一無比の力を以ってすれば、並みの魔法力では太刀打ちできなかった魔族とて封じられるのでは、と。…これが人類最後の賭けであったろう。それにすがるしか、寄る辺も術もなかったのであろう。…ダメでもともと。いや、それこそが魔族に太刀打ちできる絶対の秘策である、と信じなければ生き延びる術など他にはなかったに違いない。それが、たとえどんな非道さに満ちていようとも」

 ふっとまぶたを伏せ、思いをめぐらせるかのように押し黙るセシリア。

 そんな彼女をつらそうに見やるディルナスは、たまらずつかんでいた手にぎゅっと力をこめた。

 「…そんな事情が事情だとて、母上一人が犠牲になることはまた別ではありませんか。しかも…今日までずっとこんな仕打ちを受けているのですよ。王宮より早馬を飛ばしても半日以上もかかるほど、遠く離れたファナトゥに追いやられたまま、国の記録からも人の記憶からも放置され続けているだなんて」

 「しかし、それが道理。世の常。もしも逆な立場に妾がいたとて、同じ結論を打ち出すであろう。たった一人の犠牲で国の滅びが回避できるのなら、人類が救われるならば、喜んで贄を差し出すに違いない。一よりも百、百よりも千。数の理論でいうなれば、過程なぞすっとばしても解が正しければまかり通る。まして、極限の状況に陥ればどんな常識人とて理性での判断は不可能。…違うか?」

 ふんと鼻を鳴らして、どこまでもシニカルに嘯くセシリアにディルナスはたまらず「それでも…!」と声を張り上げる。

 「たとえそれしか生き延びる道はないにしても、人一人の命は重いと、星ひとつと同じかけがえのなさを持つと、皆が口をそろえて唱えてきた大切で大事な戒めではありませんか。それを忘れろ、なかったことにしろ、反故にしろというのですか。ずっとそれを信じて、今日この日まで生き永らえてきた者たちはこの世にごまんといるはずです。その言葉は違っても、概念は真理は誰であっても同義。…だから。各々の生命活動が無数の血のひとつにすぎないと、故にないがしろにしてもいい、おざなりにしてかまわないなどと、どこの誰が言えることでしょう。例え創造主とて、そんな権利などは、ない。…私にとって、母上はたった一人しか、ここにおられるあなたしかおられませんだのに」 

 「ディルナス…」
 セシリアは彼につかまれていない方の手、即ち右手をのばしてそっとディルナスの頬に指を触れさせた。

 「泣いてくれるか。かように愚かな母のために」

 「母上……」

 「さりとて、おまえに対しても同じじゃ。生まれてこの方、ずっと不憫な思いをさせ続けてきたのだからな妾は。自身の腹を痛めて産んだというやや子だというのに、な」

 いいえ、いいえとディルナスは唇をかみしめながら首を振る。

 そんな彼に対し、いっそうセシリアは目を細め愛おしげにその頬をなで続けるのだった。興奮のためかわずかに紅潮し、熱を持った彼の頬を。

 「妾は真実を隠さんがために、偽りの経歴をおまえに科した。血のつながらぬ孤児を引き取り、義理の子息という肩書きを負わせた。そして自身の思惑のために気の触れたフリをし続け、赤子のおまえを突き放し、今日までこうしてかけがえのない我が息子として自身の手で抱いてやれなかったのじゃからな」

 ふっとセシリアの手が止まる。何故なら彼女の右手はディルナスの左手によって重ねられたからだった。

 彼女の手にゆるやかに移るディルナスの手の温もり。それはこれまで彼と手をつないだ中で、いちばん温かに感じるものだった。

 「この母を、憎んでも恨んでも、よいのじゃぞ…? むしろ、一向にかまわぬ。元より覚悟の上じゃ。これまで妾がしてきたおまえへの仕打ちをかんがみれば、そなたにはそれだけの動機があるからな」

 「母上……」

 潤んだ瞳をセシリアに向けたディルナスの口元がかすかに歪む。
 それは半ば涙を目元に浮かべながら、そして半ば笑みを浮かべたがために見せたどうにも言いがたい表情だった。

 「どうして母上を…? 憎むべき相手は、恨むべき存在は――母上から全てを奪った者たちではありませんか?」
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