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こんばんは。「結の章・3 part 2」の用意ができました。
取り敢えず前半部分が終わり、後半はpart 3からとなります。
ちょっと今回は嵐の前の静けさみたいな話となりました。
「竜召喚の儀式」は後半からとなります(^^;)
取り敢えず前半部分が終わり、後半はpart 3からとなります。
ちょっと今回は嵐の前の静けさみたいな話となりました。
「竜召喚の儀式」は後半からとなります(^^;)
今日の授業はほとんど頭に入っていなかった。
昨夜ほとんど眠れなったせいもあるが、今夜待ち構えている大仕事のことで頭がいっぱいだった。
「よお、こんな所でおネムかいな、ラズリ」
中庭の定位置とも言える木陰で寝転んでいると、頭上からのん気な声が降ってきた。嫌というほど聞きなれた声に、目を開かなくても誰だかわかる。
「……うるさいなアガシ」
ごろりと寝返りを打つと、アガシから背を向ける。
「なんや、つれないなあ」
と言うや否やどっかりとアガシが覆いかぶさるようにのしかかって来た。アガシの身体の重みとぬくもりで一気に鳥肌が立つ。
「うわっ、お前、気色悪いからやめろっ!!」
自分より体格のいいアガシを渾身の力で払いのけると、すっくとすばやく立ち上がった。あんまりやわあ、と寝転んだままぼやくアガシを、ラズリは冷ややかに睨みつける。
「何の用だ?」
「用がなかったら声掛けたらあかんのか? わいはお疲れのラズリを癒したろーと思うただけやのにぃ」
くにゃりとしなを作って、上目遣いにラズリを見上げる。
「むさ苦しい男に襲われて癒されるわけがなかろうが」
まったくこんな事態に……と悪態をつきたくなるが、よく考えてみればラズリ自身この世界に起きていることなど知りもしなかったのだ。こんな他愛のないやり取りも出来なくなる日が来るのかもしれないと思うと、胸のがずっしりと重くなるのを感じていた。
「ラズリ……どないしたん?」
気遣うようなアガシの声に、はっと我に返る。
「ああ……いいや」
何でもないとラズリは首を振ると曖昧な笑顔を取り繕うと、アガシはたちまち渋面になる。
「なんやそのしみったれた顔は」
怒りのまじったため息をつくと、ラズリの金茶の髪をくしゃりとかき回す。やめろ、と手を払いのける前にアガシはラズリの肩を掴んだ。
「お前、何か隠しとらんか?」
鋭いアガシの視線にどきりとする。危うく動揺をさらけ出してしまいそうになる瞬間。
「なんや……恥ずかしがらんとて堪っておるようだったら、わいがいいもん貸してやるさかい」
にやりと笑って、ラズリの耳元で囁いた。瞬間、ラズリはアガシの頬の肉を摘むと思い切り左右引っ張っていた。
「ういでぃでぃでっ!!」
必死にラズリの手を引き剥がそうとジタバタするが、さらにぎゅうっとラズリは頬を引っ張り上げる。
「お前こそ下らないことを言っている暇があったら、その辺でも走り回ってこい!」
「ぅいだいっ、ひゃなしぇっで、アズヴィっ!!」
何を言っているのかまったくわからないが、恐らく「離せ」とでも言っているのだろう。仕方ないから離してやると、アガシは頬を両手で庇い恨めしそうな上目遣いでラズリを睨む。
「いてて~。玉のお肌に傷でも付いたらどうしてくれるんや? それにせっかく親が恵んでくれたこの美貌が崩れたらどうしてくれるねん」
「……知るか」
ぼそりと呟くと冷ややかな半眼でアガシを睨む。アガシは首をすくめると、頬を痛そうにさすりながら言った。
「そないマジにならんでもいいやないか。わいはちょっとリラックスさせたろうと思って言ってやったのに、心の狭いやっちゃなあ」
恐らくアガシなりに何かを感じて気遣っているのだろう。わかってはいるが、今はそれをありがたく受け入れられる余裕はなかった。頭の片隅で申し訳ないと思いながら、確かに自分の心は狭いのかも知れないと思う。
「心が狭くて結構。じゃれ合いたいならカレンにでも相手にしてもらえ」
「……カレン?」
アガシは一瞬ぽかんとしてから、やがて考えるように腕組みをすると軽く宙を睨んだ。
「カレン、カレン、カレン………………えーと、おかしいな」
まさか。嫌な汗が首筋を伝う。
しばらく考えていたようだが、やがて心底困ったように眉間に皺を寄せるとぽりぽりとこめかみを掻いた。
「すまん、そのカレンって何組の子や? わい、今まで会ったことあったかなあ?」
………そんな。
まさかカレンまでもが、か?
ラズリは自分の手が震えていることに気がついた。もしや、と頭に浮かんだ不吉な考えを無理やりねじ伏せる。
「カレンは……ティーナの親しい友人だ。昨日までお前と馬鹿騒ぎをしていただろう?」
もしやティーナのことまで忘れてはいないだろうか。不安を押し殺して敢えて訊ねる。すると「何を言っとるんや」と笑いながら。
「ティーナの友達にカレンなんておらんって。誰かと勘違いでもしとるんちゃうか?」
やっぱりそうか。ずきりと胸に痛みが走る。とうとうカレンの存在までも消えてしまった。アガシと楽しそうに笑っていたカレンの姿。それはつい昨日の出来事だったのに。
「あんなあラズリ、自分、カレンカレンって、ティーナがいながら他の女の子の名前を連呼するなんたあ何やそれは。ああ?」
大丈夫だ……ティーナは、まだいる。
カレンに申し訳ないと思いながらも、ティーナがちゃんとこの世に存在していると確認できて、つい安堵してしまう。
「……ああ、悪かった。俺の勘違いだ」
すると一瞬、アガシの表情に戸惑いが浮かぶ。
「…………やけに素直やなあ、ラズリ。お前……やっぱりおかしくないか?」
アガシは怪訝な表情でラズリの顔を覗き込む。
すべてをぶちまけてしまえたらどんなに楽だろう。魔族の脅威がはすぐ近くまで来ていることを。家族が、友人が存在ごと消えてしまう恐ろしさを。音を立てて日常が崩れていくこの不安を。この友人と分ち合えたらどんなに楽だろう。
「………おかしいとは何だ。失敬な」
駄目だ。自分の不安を誤魔化すために、こいつを巻き込むわけにはいかない。
ラズリはいかにも疲れたと言わんばかりに目頭を押さえると、小さなため息をついてみた。
「さっきから勘違いだと言っているだろう。……少し疲れているだけだ」
少々わざとらしい演技だと思ったものの、ありがたいことにアガシは素直に受け取ってくれたようだ。
「まあ……それならいいんだけど、さ」
アガシは勢いよく立ち上がると、服についた汚れを払い落とす。肩越しに振り返ると破顔する。
「邪魔してすまんかったな。そいじゃあ、わいは先に戻ってるで。せいぜいゆっくりしいや」
ぽんっとラズリの肩を叩くと、じゃあなと背を向ける。ひらひらと手を振りながら颯爽と中庭から去っていった。
「……ありがとう、アガシ」
彼に聞こえたかわからないが、ラズリは遠ざかっていく背中に向かってそっと呟いた。
* * * *
いつものように夕食を取り、いつものように就寝時間を向かえ、寮の灯りがすべて落とされた。
暗い部屋の中ではアガシのいびき交じりの寝息、時計の秒針が時を刻む音がやけに大きく聞こえる中、ベッドの中でラズリはずっと目を覚ましたまま約束の刻限が来るのを待っていた。そろそろだろうかと、ポケットに入れていた胡桃を取り出した。
これはディーン、いやケインが用意してくれた魔法の胡桃だった。一学生であるラズリが無断で寮から抜け出すのは難しい。いくら学院長の命だとしても、その「学院長の命」自体が内密のものなのだから。とにかく誰にも気づかれないように寮から抜け出す必要があった。
「これを割れば、途端にこちらへ転送されます」と渡されたのがこの胡桃だ。古代文字のようなものが殻に描かれている以外、魔力の波動は微塵も感知できない普通の胡桃だった。
ポーン……。
振り子時計が午前零時を告げる。約束の刻限だ。ラズリは半信半疑のまま手の中の胡桃をぐっと握り締めた。
ぱりん。
堅い殻にひびが入る音がした途端、ラズリは暖かなベッドの中から冷たい大理石の床の上に横たわっていた。
「殿下。お待ちしておりました」
身を起こすとラズリの足元でひざまずく学院長レドナ・ウィノーラを始めとする一行の姿があった。身を起こすとそこは昨日訪れた円卓の間だった。
「大したものだな、これは」
握り締めた手をそっと開くと、きれいに割れた胡桃がからりと床に転がり落ちた。
「儀式を始めよう」
毅然と立ち上がると、ひざまずく一行に言い渡した。しかし。
「殿下お待ち下さい。その前にお召し替えを致しましょう」
柔らかい声でお手伝いさせて頂きますと名乗りを上げたのはアニス・フォーガンだった。
ティーナと面差しが重なる彼女から「着替えを」となどと言われて、一瞬どきりとする。しかし。
「……確かにその通りだな」
改めて自分の姿を見直すと、ラズリは苦笑した。
なぜならラズリは寝巻き代わりのシャツとズボン姿という、とても国の代表として大業を成し遂げようとするには相応しくない格好だったのだから。
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うわあい、続きー!
待ってましたー! いさなさーん!
いよいよ儀式直前ですねっ。
そして、そしてついに魔の手がカレンにまで…!( ̄□ ̄;)
アガシとラズリがじゃれ合う場面につい「どきーっ!」となったのは私が腐女子ゆえでしょうか;
いやーん、やまのの疲れも癒してー!(こら;)
お召し替え、にもちと反応してしまいましたっ。
やっぱり王族らしくマントとか羽織るの?
金糸銀糸が縫い取られた派手こい衣装とか?
とかなんとか、またしても続きが気になりますね
早く先が知りたいような、でも何が待ち構えているのかがわからない故のドキドキ感とかっ。
さらにさらにの怒涛の展開をお待ちしておりますね
がんばってくださいましー
いよいよ儀式直前ですねっ。
そして、そしてついに魔の手がカレンにまで…!( ̄□ ̄;)
アガシとラズリがじゃれ合う場面につい「どきーっ!」となったのは私が腐女子ゆえでしょうか;
いやーん、やまのの疲れも癒してー!(こら;)
お召し替え、にもちと反応してしまいましたっ。
やっぱり王族らしくマントとか羽織るの?
金糸銀糸が縫い取られた派手こい衣装とか?
とかなんとか、またしても続きが気になりますね
早く先が知りたいような、でも何が待ち構えているのかがわからない故のドキドキ感とかっ。
さらにさらにの怒涛の展開をお待ちしておりますね
がんばってくださいましー