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 や…やってきました第三回!

 
 …し、しかし; 
 またしてもラズリとの再会直前にいいところでぶった切るどSクルルギ(爆)のようなやまのであった…(´д⊂)

 つーか出来上がってみたら何これ! 
 いや~~~んっ破・廉・恥!(苦笑;)
 地の文抜かして、台詞だけ読んでみそ。
 年齢制限付文章みたいだから…!(爆・喘ぎみたいで…s)
 
 ――ああ、もしかしてそれが狙いですか、いやけしてそういうわけでは…ゲフン(-_-;)
 
 実は初期設定ではティーナに病気になってもらう予定でした(爆)
 >過呼吸ですが…
 それをディルナスさんに看病してもらおうーという流れだったのですが、ある意味それもなんか無理やりっぽそう? とか思って、こうなったらお茶が出てきたんだから、お約束の火傷ネタを(笑)
>過去にも一度やったことがあるからねえ、自分のオリジナルで;

 しかもディルナスさん、何かの能力者!?
 ええっ\(◎o◎)/ まさかギアス持ち…?(番組違います;)
 ここいら辺りは火傷ネタから派生していきなり出てきたので、自分でもびつくりよー!
 あ、後でいさなさんにだけはネタばらししないと!(笑)

 …て、いうか;
 またしてもディルナスさんとの直接対話に邪魔が入りましたねorz
 (いや、絶対あの人からかってるって! 純情ティーナが大好きだから!(笑)
 つーかあなたタラシ? アガシに続いてまたそんな人が…?(爆)
 どうも金髪・碧眼の人当たりよさそうなお兄ちゃん属性がいると、うっかり第一印象人良さそうで実は腹黒というか、企んでいたりする設定が大好きなんですね!
 →エスカのフォルケン兄とか、ギアスのシュナイゼル兄とかたぶんそっち系でしょうから;
 ディル兄はラズリ(ラズウェルト)もかわいくてきゅうん♪なんだよ、わあ、いいなあ、兄…! 両手に花じゃん!(笑)→壊れてんなあ;
 しっかし;ティーナはこのまま彼から真相を聞きだすことができないんじゃないんだろうか、という気になってきたのですが、これもまあ作戦ということでvv
 
 ディーン先生がまぶたにチッス☆なら、ディルナスさんは手にチッス☆と、総ウケ属性のティーナっぷりを存分に書けておいらもー満足!(笑)
 えー。じゃー次回のラズリとの再会ではどうなるのー? 
 やっぱり本命だから、そゆことー?
 …となるかどうかは、書き上げてからのお楽しみ♪


 しっかし、予告までして一日遅れるたあ何事やねん!
 と反省することしきりなんですが、そ、それでもたった半日でよくぞここまでがんばった自分! えらい! さー次いこ次! 
 …なんですけどもね;
 午前中から書いておればじゅーぶん土曜日掲載に間に合ったんですけど、どーしてもだりだりと過ごしてしまう春の休日。。。
 やっとエンジンかかったのはお昼食べてから、午後二時過ぎってひどすぎる;
 まあ、そんなこんなで肝心の本編は続きをどぞーvv
 途中で赤面して胸ばくばくっとなったあたしはかなりのティキンなんですが(^^ゞ
 これを読んでいるあなたも、そんな風に読んでくれたらいいなあと。
 そうしたら狙いすました通りです。いひひひ。

 あ、書きわすれていたPart:1の突っ込みがひとつありまして、えー白竜からうりうりとティーナのことをからかわれると自分は猛烈に怒るくせに、白竜と黒竜のことには素でつっこんでしまい、白竜に「色ガキ」扱いされたラズリくん、ばっかだねえ! ということで…(^^ゞ
 (ひどっ。何その主人公いじめなコメント!)

 「やあ、だいぶ待たせてすまなかったね」
 こつこつと扉が叩かれ、ディルナス、彼が颯爽と現れて室内に入ってきた。
 「いいえ、ちっとも。ディルナスさま、セシリアさまのご様子は? ご病状の方は大事なかったですか?」
 ティーナはディルナスの姿を目に止めると、満面の笑みを浮かべて彼を迎え入れた。
 彼女は応接セットの長椅子に腰掛けながら、先ほどマージが淹れてくれたお茶を、カップとソーサーを手にして優雅に楽しんでいた最中だったのだ。
 「ああ…。いつもの発作で、そう大したことでは…。――ティーナ?」
 「はい?」
 ストライドを大きく取りながらも、かなりソフィティケートされた動作で、部屋を横切りながらティーナのそばまでやって来たディルナスは、ずっと誰かを探しているかのような素振りで、周囲をきょろきょろと見渡し続ける。
 「どうか…されましたか?」
 「いや、それはこっちの台詞だよ。いったいどうしたのかなと思ってね」
 「どうか、って…?」
 「あれ? もしかして、彼はもう帰ってしまったのかい? それは残念だったな。彼も交えていろいろと意見を仰ぎたかったのに」
 「いったい、何のことですか…?」
 きょとんとした目つきで、さも、私は何にも存じ上げておりませんが? といった態度で小首をかしげるティーナ。
 相手の目を見て、堂々と、ひるむことなく…。
 ディーンの鏡像に先ほどレクチャーされたばかりのことを、その通りに試みてみてのことだった。
 …大丈夫。大丈夫よ、うまくいくわ。そう、落ち着いて。
 ティーナは何気ない風を装いながらも、極度の緊張のあまり、つい何度も声が裏返りそうになってしまうのだが、それでもなんとかもちこたえてそのままディルナスとの対峙を続けた。
 そう、件の彼はもうどこにもいない。先程、彼自身から呪文を指南されて、ティーナは彼を例の胡桃の中に戻したのだ。
 しっかり閉じ合わさった胡桃の殻は、今もちゃんと制服のスカートのポケットの中奥深くにしまわれ、彼女にその存在の在り処を布越しに伝えるだけ。
 不用意にティーナがポケット部分をいじったり、ほんの少しばかりの凹凸を気にして視線を向けなければ、じゅうぶんやりすごせるはずなのだから。
 みー。みゅー。
 「あら…。猫ちゃん?」
 ティーナの足の辺りで甲高い声が響いた。慌ててそちらに視線をずらすと、床の辺りでころころした塊がこちらをじっと見ていた。それは先ほどの毛足の長い白猫だった。
 「うふふ、かわいい」
 アガシが憑依して、そしてまたミランダとの交戦の際にも巻き添えをくらったかの猫は、あんなことがあったにも関わらず、ティーナの姿を目に留めるとつい本能で甘えたくて寄ってきたらしい。
 「もしかしてディルナスさま。まさかこの猫ちゃんの分までお茶をご用意させたのですか?」
 ティーナは擦り寄ってきた白猫をそっと抱き上げながら、にこりと屈託のない笑顔を彼に向けた。
 「そうだ、おまえもお茶をいただいていく? とってもおいしいわよ」
 ティーナはなんとなくカップを持って戯れに猫の口元につきつけてみるが、白猫にはそんなおもてなしなど傍迷惑だったようだ。
 むずがるような声で「にゃおん」とないたかと思うと、ティーナの膝からすたこらさっさと退散し、部屋の隅まで行って、くるりと体を丸めこんでしまうのだった。
 「あはっ。そうよね、猫舌のおまえにはあったかいお紅茶は苦手なところか、到底、無理な話よね」
 さあ。とりあえず、第一関門はクリアー…できたかしら?
 白猫の方に向けた視線を、そのままディルナス側にスライドさせ、満面の笑みを投げかけるティーナ。
 そんな彼女に調子を合わせようというのか、それともそんな軽い小芝居などとっくに彼は見抜いているのか。
 その、どちらにもとれるような穏やかなまなざしで、ディルナスは「…へ、え」といたく感心したかのような声を発するのだった。
 「そう、なんだ。これはこれは…。ふうん、それが新しい君の方法(やりかた)なの?」
 「…え」
 どういう意味なのかとうかがい立てるような視線をディルナスに送るティーナ。
 すると、彼はますますくつくつと喉の奥を震わせながら、彼女のすぐそばの長椅子まで近づいていくのだった。
 「くすっ。本当にかわいいね、ティーナは」
 「ま、またっ。そ、そんなことばっかり…。もう、か、からかわないでくださ…」
 「別にからかってなんていやしないさ。僕はいつも自分が思っていることしかこうして口には出していないよ」
 それは…。本当に額面どおりに受け取っていいものか、あるいはもっと異なる意味がこめられているのか。
 未だもってその真意がつかみきれないティーナは、発された台詞からどうにかして裏が読み取れないかと試みるも、どうしても彼の人の好い、誠実そうな笑顔につられて、ただただ、正面から自分も笑顔を返すのが精一杯だったのだ。
 「…本当さ。まったく、君はかわいいよ。そんな風にできるだけ、自分一人でなんとかがんばろうとするところが、ね」
 ぽふん。ディルナスはティーナの隣りへと、ごく自然に並んで腰掛ける。その間中ずっと、しきりにくすくす笑いを浮かべながら。
 ――え。えええええっ。
 予想だにしていなかった展開にティーナの方がひどくおののき、緊張のためかいやな汗まで額に滲んでくる始末。
 長椅子、というには名ばかりの、人一人分とあと少しの余裕がある程度のスペースしかない代物である。
 そのため、年頃の割には小柄なティーナと、青年にしてはずいぶん痩せてほっそりとした体躯を持つディルナスといえど、二人いっぺんに腰かけると、ほとんどゆとりのないぎゅうぎゅう詰めに近く、かなり密接した隣り合わせの状態となるのだった。
 「…や…。あの、ディルナスさま…?」
 「ん? どうかした?」
 「その…あまりにも。これはちょっと、いえ、とっても近すぎると思うのですが」
 ティーナはやや声を震わせながらも、できるだけ意識しないようにつとめながら、ごくさらりと切り出してみる。
 だが、ディルナスはそんなティーナの動揺した様子などいっこうに構わず、しれっとした顔で返事をよこすだけだった。
 「ええ? そうかい。そうかなあ…? そんなのきっと気のせいだよ、君のね」
 「い、いえ、いいえそれは…。きっと、かなり、そんなことは絶対ないと思いますが…?」
 すかさず言い返すティーナに対し、ますますもってディルナスは人を食ったような笑みを浮かべて平然と座り続けた。
 「ふうん。でもさ、よく考えてごらんよ。僕らはこうして近い距離にいるからこそ、じっくり互いに言葉が交し合って、話ができていいんじゃないかなって、そう思わないかな?」 
 「そ、それは…。それは、そうかもしれませんけれども。でも…そ、それは…。だってそんな、けして、席がここしかないわけでは…。お、お向かいにもちゃんとお席があることですし、も、もう少し離れてくださらないと、あた…私が、お話をしようにもうまく、話せませんし…」
 しどろもどろに話をつなぎながら、ちらと向かいに視線を送ると、ティーナの前には一人用の肘掛付き腰掛けが二脚分も空席のままちょんと存在しているのがありありと証明されるのだった。
 「ああ、そっちか。でもね、あっちに離れて座ったら、それこそ君との間がとても離れてしまうよねえ。それじゃあんまりにも遠すぎるなあ」
 「と、遠すぎるだなんて…! そ、そんなことは絶対にありませんから、けしてっ」
 ぶんぶんぶんっ。えらく勢い激しくティーナは首を振って、すぐさま「な、なんなら私の方があちらに移動いたしますがっ」と続けた。
 しかし即座に「それはダメ」とディルナスからダメ出しが加えられ、立ち上がろうと中腰になった彼女の腕をつかんで再び着席させるのだった。
 「そんな…。あの…。ど、どうしてですか?」
 「だって、よく考えてごらんよ。いや、考えなくてもすぐにわかるだろう? それこそ、君と膝を突き合わせてよく対話をするには、これくらいそばにいないとね。だめじゃないのかな?」
 「で、でも…」
 「君は僕の話を、ちゃんと聞こうとしてくれているんだろう? なら…こうしていてくれないと、正確に伝えてあげられないよ。…ね?」
 くすり。弓張り月のように目を細めて、きゅっと口角を上げて。
 どれほど高貴なお方とて、誰も彼を言い負かせることなどできない、そんな薔薇の微笑みを浮かべているのは、今目の前にいるディルナス、その人。
 たとえ遠目から存在を確認しても、その微笑に触れたが最後、いたく胸苦しくなるほど、激しい動悸・眩暈が自身を襲い、実にいてもたってもいられなくなってしまうのだ。
 だというのに、それをこうして、かなりの至近距離で、何度も何度も楔を自身に打ち付けられるが如く、目の裏に焼き付けるかのように連発されてしまったら……。
 ティーナはもう窒息寸前のような耐えられなさを全身で感じて、なんとも口にしがたい、息をするのも精一杯の身もだえが止まらなくなるのだった。
 「だ、だ、だってって。それは…でもっ」
 「でも…? どうしたの、ずいぶん顔が赤いみたいだけど、そんなに暑い? もしかしてこの部屋の空調が悪いせいかな…?」
 「え、や…っ。あ、あのっ。そんなことはっ。も、もうっ。そ、そ、そんな近くに寄らないでくださ…っ」
 耳元に吹きかかってくる彼の放つ息の温度に。
 さらりとなびく髪の先が自分の顔に触れるか触れれないかの、この微妙な位置に。
 そして何よりも、すさまじいまでの至近距離で近づいてくる彼の…空色の瞳に。
 ティーナは思わず我を失いかけてしまうのだった。
 「どうして? もしかして熱でも? そりゃ大変…! 君の具合が悪いのかどうか、ちゃんと触れて確かめないと…」
 「だだだ、大丈夫です、大丈夫ですからっ。いいです、いいですっ。も、もう…それ以上は。み、見ないで、そんな目で見ないでくださいぃっ」
 あたし…あたし、やっぱりもうダメぇ…!
 ご、ご、ごめんなさい、ディーン先生っ。
 本当にあたし無理です、絶対にこれ以上は。
 ディルナスさまを直視し続けながら、何でもないふりで会話を続けるなんて、とてもじゃないけどできませんよおおっ。
 極度の恥ずかしさを感じたため、、限界を超えたティーナは自分の耳たぶまで紅潮した具合を彼に間近で見られまいと、慌ててその身を翻そうとした。
 とたん――。
 「あっ…つっ…!」
 激しい動作につれ、先ほどからずっと手にしたままだったカップを不用意に揺らした。そのせいでティーナは、自分の手の甲にあやまって紅茶をかけてしまうのだった。
 「ティーナ!」
 慌ててディルナスは彼女の手をはしっとつかんだ。
 その拍子にティーナの手からカップが落ち、かしゃんと音を立てた。テーブルの上にはこぼれた紅茶が、盛大な地図を描いて一面に広がっていく。
 「ご、ごめんなさいごめんなさいっ。ティーカップが…!」
 形もデザインも、見た目高価そうに見えるそれが、テーブルの上に落ちた衝撃により縁が欠けたり、柄が割れたのではないかと自分のことよりもひどく案じるティーナ。
 そんな彼女にディルナスは「こっちが優先だ」とでも言いたげに、ふるふると首を振って彼女を一喝する。
 「そんなことはこの際どうだっていい! それりも君の手の方が…! 大事無いか? 痛みは?」
 「え、ええ…。はい…。ちょっとしかかからなかったみたいだし、少し冷めてもいたみたいで…」
 「それだって火傷の痕がついたら、そっちの方が大変じゃないかっ。忘れちゃだめだよ、女の子なんだからね…君は」
 小さな子供のおいたを叱り付けるかのような勢いでそうまくしたてると、ディルナスはふうと一息をついた。
 それから、きゅっと唇を引き結び、どことなく決意を固めるかのような真剣なまなざしで問題の彼女の手にじっと視線を注いだ。
 「で、ディルナスさま…? あの…?」
 「しっ。ちょっと黙っててくれないかティーナ。集中、するから」
 ふいに押し黙ったディルナスに面食らうティーナはおずおずと声をかけてみるものの、ディルナスはそれすらも封じるかのように、静かに手で制してそっと口火を切るのだった。
 「――」
 何やら低い声音で呟きながら、ティーナの手をそっとつかむと、その甲の上にもう一方の自分の手を重ねていくディルナス。
 まじない言葉のようなものの詠唱が終わると、また無言になり、しばし間隔を置いた後で、そっと彼女から手を離す。
 すると、どうだろうか。先ほどまでじんじんひどく痛んで、うっすらと赤く腫れ上がっていた箇所は、あとかたもなくすっかりきれいに治っていたのだった。
 「…で、ディルナスさま…!」
 ティーナはあまりの突拍子もない出来事がその身に降りかかったことに眼を見張って驚き、しげしげと自分の手と彼の顔を交互に眺め入る。ずっと、彼に手が握られたままであることなど、この際きれいさっぱり忘れて。
 「もしかして…。あの、魔法を…お使いになられるんですか?」
 王族の中に魔法従事者が存在していることは、ラズリ以前にも妻を娶る前の現王や、デヴォンシャー公に嫁ぐ前のセシリア公妃などが記憶に新しく、さほど物珍しいわけではない。
 だが、在野にいる上、王都に本部のある魔法使いギルドにすら属しておらぬ一介の青年・ディルナスが、その能力をここまで開花させていたとは驚きとともに初耳である。
 しかしティーナが彼によってかけられたこれは、どう転んでも治癒の魔法の一種だ。魔法学院であれば初等科クラス程度に履修するようなごく簡単な程度のもので、一、二時間程度の授業を受ければ、ほとんどがやすやすと習得してしまうほどの。
 しかし、どんなに簡単な魔法とて、一般に生活する人々が自己流でそうたやすく使えるものでもない。
 魔法に関する呪術書や指南書は世にごまんとあれど、ただ記載された記述通りに、まじないの言葉を遊び半分で発したからといって、実際に通用することは皆無に等しいのだ。
 魔法を使うには、その使用・用法をよく習い、きちんと身につけた“魔法使い”にならなければできぬことなので。
 もちろん魔法を正しく習得し、また使いこなすには、素質と天分の才が備わっている者に限るのは大前提であり、何ら間違いではないが、しかしだからといって何ら修行もなしに、いきなり有能な魔法使いには、どれほど才能があろうともなれるわけでもない。
 彼ら魔法使い見習い候補生たちは、各々が持つ魔法使いとしての性質をうまく引き出しながら、よりよい才を磨き、安定した魔法力を身につける必要がある。
 そのためにこそ、育成者としての教師の存在の必要性をはじめ、教育の機会を施すことができる魔法学校の存在があるわけで――。
 そういった過程を経ておらず、“魔法”めいた特別な力を使うことができるディルナスには、いったいどんな理由(わけ)があるというのだろうか…?
 「んー。そうだね、これは正確には魔法じゃないけど、でもまあ、ちょっと当たらずとも遠からずってところかな」
 「え。それじゃ…?」
 「ごめんね。僕のこの力は訳ありなんだ。君に隠し事をするつもりは毛頭ないのだけれど、今だけはちょっと…事情で伏せさせてもらうことを勘弁してくれないかな。とにかく、順を追って話していこうと思うよ。…君にはどうしても、絶対、嫌われたくないからね」
 ふわり。ティーナの手にやわらかな温もりが宿った。
 さらり。ディルナスの陽に透けた黄金の髪がかかる。
 く…ん。彼の髪の香りか、薔薇の微香が鼻をくすぐる。
 ティーナはさらに呆けたように口を半開きにしたまま、石のように身動きひとつできず固まった。
 先ほど感じた一肌のぬくもり…。それはディルナスによって治癒が施された彼女の手の甲を、彼がそっとくちづけたためだった。
 しかも何度も、何度も。愛おしそうに、いたわるかのように、慈愛の心をこめてそれは儀式のように繰り返されて……。
 「ティーナ…」
 何度目かのくちづけの後、そっと視線を交わしあう二人。
 「ディルナス…さ、ま?」
 互いの間に流れる、ゆるやかでやさしい時間。
 いつまでも永遠に続くかのように思われた、そんな平穏でのどかなひととき。
 だが、それはけして長くは続かなかったのだ。
 何故ながらそこに、突如として割りこんできたのは――。
 「きゃあああああっ」
 屋敷中に響き渡る、鮮烈なまでの大音量の悲鳴、だったのだ。
 「…! 何事だっ」
 ディルナスはティーナの手を握り締めたまま辺りを見渡すと、屋敷全体に、強い風を受けた時のようなびりびりとした振動が走った。
 「竜が…! 竜が出たぞーーーっ!」
 「逃げろ! みんな竜に殺されないようにしろ…っ!」
 次いであちこちから起こる驚声に、ディルナスとティーナは顔を見合わせて、二人一緒に揃って長椅子から立ち上がった。
 「ディルナスさま、竜です! 竜が出ましたっ」
 そんな二人の前に勢いよくばたーんと扉が開け放たれ、女中頭のマージが血相を変えて飛び込んでくる。
 髪は乱れ、着衣は崩れ、息もだいぶ上がっている。
 だがそれでも、デヴォンシャー家の歴史始まって以来の突拍子もな大事件に、主大事といつもの礼儀も忘れて飛び込んできたというわけだ。
 「竜だと…! まさか本当に竜なのか? 見間違えではないのかっ」
 「いいえ、かなり遠目でしたが、確かに白いのと黒いのがそれぞれ一頭ずつ…。まだ庭も邸宅も、どこも何も被害はございませんが、どうやらこちらの出方をうかがっているようで、屋敷を取り囲むように何度も上空で旋回を繰り返しておりまして…」
 「そんなばかな…! 彼らの住処は北の奥地のシュナイン・フォーレンの山地だ。古文書によれば太古に彼らと取り交わした契約故に、そうたやすくこちら人間の住まう場所に姿を見せるわけが…!」 
 普段の温厚で沈着冷静な彼と比べたら、半ば信じ難いような取り乱し方で、ディルナスは青ざめながらしきりに首を振った。
 「ええ、でも大丈夫ですよ、ディルナスさま。既にセシリアさまをはじめ、屋敷中の皆は地下室へと避難が完了しております。ディルナスさまもお早くティーナさまをお連れになってお逃げくださいませっ」
 「わかった。いや、しかし…。竜がこんなところに出没するとは未だかつて…。まさか、誰かが召喚したとでも」
 白と黒の竜…? …誰かが、召喚?
 ティーナはマージとディルナスのやりとりに、終始ひどく胸を高鳴らせ続けていた。
 竜を、しかも二頭を同時に召喚するなどと、そんな大それたことができるのは、よほど偉大なる技に長けた才ある魔法使いか、もしくはどこまでも向こう見ずな命知らずだろう。
 どちらかに確定するには情報量が少なすぎて、決定打に欠けるのは事実だが、もしも召喚術にて竜が呼び出されたことを前提にした上で、その張本人が前者であるならば――。
 該当者はセレスト・セレスティアン国内以外にも幾多の存在があるに違いないだろうから、ティーナのようなまだ学業半ばの魔法使い修習生ごときに、正確に探し当てるには困難を極める。
 しかし、もしもその竜の召喚者が後者であるならば……。
 自身の許容範囲を省みず、ぬけぬけと大胆な事をやってのけて成功させたのは、ティーナが知る限りにおいて過去に一人だけ。
 今のところ、そのたった一人しか、彼女には思い当たる節が、ない。
 「――待ってください! ディルナスさまっ」
 「ティーナ…?」
 地下へ急ごうと彼女を促しかけた彼を手で制し、ティーナは声を張り上げた。
 確証はない、ただの自分の直感だ。
 けれど、それにかけてはこの場にいる誰よりも自信がある。
 なぜなら、自分はこれでも魔法使いのはしくれ。…とはいえ、恥ずかしながらまだ半人前の上、しかも学院きっての落ちこぼれとして名が通ってはいるけれども。
 でも…たとえそんな自分でも、このことに関してはけして譲れないだけの、強い思いが、あるから。
 「もしかしたら、彼が――。彼かも、しれないのです、あの竜を呼んだのは…!」
 ガタガタガタッ。
 竜が邸宅そばを羽ばたきながら通り過ぎていくその勢いのせいか、まるで地震の影響を受けているが如く、屋敷全体はひどく揺れ動いた。
 バリバリバリッ。
 窓にはめこまれた硝子も、風圧で今しも割れてしまうのではないかというほど、けたたましく鳴り響く。
 「…ひっ! 今、今竜が、竜がこっちを見て…たっ…!」
 半ばヒステリックにマージが声を上ずらせながら叫ぶ。
 しかしティーナはそんな彼女の様子を尻目に、竜の姿を間近でその目でとらえようと、たっと一人で窓側へ駆け寄っていく。
 それとほぼ同時だった。
 窓越しではあったが、彼女ははっきりと見たのだ。
 さっき通り過ぎていった竜が、ごおっと風の音を立てながら、もう一度すごい勢いで引き返して来た姿を。
 体表を覆う白い鱗が陽光をきらりと集めて光ったかと思うと、しゅるりとなびく旗のようにひるがえりながら、その一抱えほどもある大きな赤い兎のような眼でこちらをぎろりと凝視していた様を。
 ――その、刹那。
 “ティーナ……!”
 彼女の耳朶ではなく、脳裏に直接呼びかけるひとつの叫びがあった。
 聞き覚えのない、異形に満ちたその声音。
 故意に歪められてる音声。
 それでもティーナはすぐさま、先と同じように直感で判断した。
 ああやっぱり…。自分の思った通りだった。
 そう、そうだったのね。間違いないんだわ。
 いいえ、あたしが彼を間違えるはずが、ない。
 あれは彼なんだ、彼が竜を…!
 「ディルナスさま…!」
 「ティーナ…?」
 ふいに振り返ったティーナの、先ほどとはうって変わって別人のような晴れ晴れとしたまなざしと表情に、マージもディルナスもぎょっとして立ち尽くした。
 「屋根の上に人が出るにはどうしたら? このお屋敷のどこからだと行けますか?」 
 「どうしたんだい、ティーナ…!」
 「あたし、あたし…! 行かないとならないんです!」
 「何だって…?」
 「竜に、竜に会わなくちゃ。だって彼があたしを…あたしの名前を呼んだんですものっ」
 切羽詰った表情でティーナはきゅっと眉根を寄せると、ある決意を固めたのか胸の辺りで拳を握りしめた。
 痛いほど、駆け巡っている混沌とした感情。
 焦り? 不安? それとも…期待。
 いや、それはきっと全てが当てはまるのだろう。
 彼のことを思う、ただそれだけで、こんなにも胸が熱くなる。
 感情がぶわっと湧き上がって、どうにもこうにもいたたまれなくなってくる。
 だって…彼は――。
 「ごめんなさいっ。あたし、行きます…!」
 「ティーナさま!」
 「待っ…! だめだティーナ、むやみに外に出ては危険だ…っ」
 ティーナはディルナスやマージに笑顔でそう宣言すると、彼らの制止を振り切り、部屋をそのまま出て行った。
 弓の弦を限界まで思い切りよく引いて、そして勢いよく放たれた矢のごとく、一度として彼らの方を振り返ることなど、なく。
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