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 だうも(爆)
 またまた、やまのですvv

 つい先日も自分担当分のこぼれ話と裏話をさんざ語って語り尽くしたばかりなんですが、さらにもうちょい蛇の足なんぞを…(^^ゞ
 以下は自分のブログにて語った内容なのですが、小説に関わるトピックスでもありましたので、こっちでも触れておこうかなと思いまして、部分だけ抜粋させていただきました♪

 しょせんよもやま話の域を越えていない、そんなのどーでもいーい話題かもしれませんが、よかったら読んで下さいね~vv

さらに下の方で語れなかったのでこんなところでなんですが、既にご存知のように、ブログのテンプレート変えてみました♪
 これを選んだ理由は2月のバレンタインっぽい雰囲気と、ディルナスさん宅の家屋敷にふさわしいイメージかなあと思いまして(^^ゞ
 ほら、趣味の薔薇屋敷だからさ、デヴォンシャー家って…(笑)
 ちょっとゴシック風味で装飾の枠飾りなんかながそれっぽいかなあと。
 クラシックで荘厳な様式美を感じさせるところが気に入っております。

 
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こんばんは。やまのです♪

おかげさまで、「転の章:2」を月をまたがずに堂々掲載させることができまして、心から嬉しい限りです。

…とまあ、ここまで書いていてなんかちょっと拍子抜けしていたりもしますが(^^ゞ
終わったらあのことも書こう、これも書きたい~! と思っていたのですが、なんかほけらとしていたら、どうでもいいことだにゃー(=^・^=) 

…なんて;

でもまあ、やっぱり。魂削って書き上げた大事な自分の作品でもありますので、思いいれも尋常ならざるえないほど、こめにこめまくっていたりしますから、いつもの如く、つらづらにつれづれに、思うところを書いていこうかなと。

 そんなわけで、気ままにワープロを叩いていきますので、ネタバレの嵐にもなりますが、お時間の許す限り、どうぞおつきあいくださいませ。

終 わ り ま し た ーーーーーっ !


 …てぇなわぁけでぇ。
 後ほどまたまた嬉し恥ずかし楽しいうちあけ話なんぞをここに展開したいと思います♪

 やまのさん、昨夜22時帰宅。
 執筆、翌朝4時頃まで。
 仮眠取って、今から出勤(爆)
 グロンサン強力内服液をかっくらって行ってきまーす♪
 うふ(自棄)

 ああこれでやっと人間らしい生活が営める…(笑)
 生活に必要不可欠な時間を除いた自分の時間は、全て執筆に充てていたので(これで家庭があったら離婚ものだねきっと;)、もうやつれてぼろぼろなのだった…。
 うちの母に「あんた何その顔…」とあきれられたほど死相が出ていたみたいですよ。
 にゃははははは(アガシの真似)。
 


 何はともあれ


俺は自由だーーーっ!


 …好きに書いているくせに、何が自由なんだか;
 それこそえらく本末転倒ものですが、それでもなんかおもきし開放された気分なんじゃい。
 ほっといてたもれ…(笑)
 星も見えない暗闇の下、遥かに続く連綿とした遠い道のりを、二頭立ての馬車が疾走し続けていた。
 質素にして剛健といった、比較的長距離に向いた作りの箱型の車を、栗毛と葦毛の毛並みのいい馬たちがそれぞれ引く。
 手綱を握るのは年の頃、壮年といった男性の御者。手慣れた鞭さばきで、漆黒の夜の帳の中を時折、威勢の良い掛け声を響かせながら、もっと早く走れと言わんばかりに鞭を振るい、終始馬を追い立てるのだった。
 その車の中に座すのは波打つ黒髪を長く伸ばした一人の少女。名門・ロータスの王立魔法学院の制服と、学校指定の黒無地のケープ・マントに身を包んだ彼女はティーナ、ティーナ・アルトゥンだった。
 ティーナ、彼女は膝の上に籠を置き、馬車が目的地に到着することだけをひたすらに、じっと待ち続けていた。
 その籠は元からティーナの持ち物ではない。御者が彼女に車内に乗り込むよう指示した際、ひとかかえもある、中細の雑木の蔓で編んだ籠を持たせたのだ。
 彼からそれを受け取った際、ずしりとした重さを感じて、ティーナはふと、御者の顔を見やる。
 この中にはいったい何が入っているのか。彼女は視線で御者に問う。すると、その意を汲んだ御者は、すぐに彼女に望むべく答えを与えた。
 いわく、中には彼女のためにデヴォンシャー家お抱えのシェフがこしらえた夜食と、魔法瓶に入れられた温かい珈琲が用意されているのだと。
 ファナトゥの領地は、王都からも距離が離れていたが、ロータスからもなかなかにして遠かった。
 二頭立ての馬車を使い、各地に設けられた駅にて馬を交換しつつ、ほとんど休みなく進行したとて、到着は早くても翌朝になると、ティーナは前もって御者から聞かされていたので。
 ですから、どうぞ馬車の中でお楽にお過ごしくださいませ。
 御者は満面の笑みを浮かべながら、ティーナにそう勧めた。
 あなたさまは大切な我が屋敷の大切なお客人でもあります。その間に空腹を覚えるようなことがあれば、その時はこのバスケットのお夜食を遠慮なくお召し上がりになられて良いのですよ。
 そう御者から、うやうやしく丁重に頭を垂れながら申し渡され、彼女はこくりと無言でうなずくのだった。
 お気遣いは大変ありがたく思う。しかし、どうも今は何も口にしたい気分ではないので、当分遠慮しておく。ただ、気が向いたら何かつまむかもしれないけれども…。
 本当はそう返事をしたかったティーナだったが、前述の如く彼女が正直に自身の心境を打ち明けようものなら、先の御者の口ぶりから察すれば、たちまちの内に大事へと発展するのはたやすく予想がついた。
 彼女が何気なく言ったその言葉によって誤解が生じたあまり、御者から過剰な詮索と余計な心配を招き、挙句、駅についたら薬師や医師を呼んで診てもらった方がいいのではと、どれだけ止めるのも聞かず奔走するやもしれない。
 もちろん、そんな事態を引き起こす羽目になるのはどうしても避けたかったので、ティーナはひたすら聞き分けよく、御者の言うがままに従うのだった。
 そしていよいよ、出発の時は訪れた。
 御者は再び深々と頭を下げ、静かに馬車の扉を閉めた。その上、しっかりと錠を下ろすことも念のため忘れずに。それは馬が疾走する勢いで、扉が急に開いたりしないようにという配慮からだった。
 扉の向こうでは見送りのためにかけつけた教諭のディーンが「気をつけて行っておいで」と、見慣れたなじみの笑顔とともに手を振った。
 学院からは誰のつきそいもなく、一人で現地に赴くことになった自分を気さくに送り出してくれたこと、それだけが、唯一の餞別とティーナには強く感じられた。
 そしてほどなくして――。
 扉が閉められてからあまり間を置かず、御者台に乗りこんだ脚者の「やあっ」というかけ声オとともに、馬車はゆるやかに走り出した。
 馬車の中は意外にもゆったりし、十分な広さが確保されていた。
 ティーナが乗り込む寸前、見た目、長距離を走る馬車にしては、かなりこじんまりとしているように見受けられたので、さぞや中も窮屈だろうとあらかじめ覚悟を決めていたが、座席に腰を下ろしたとたん、そんな心配はただの杞憂にすぎなかったことを思い知らせれたぐらいに。
 確かに大柄の男性二人が向かい合わせで座れば、さぞやたちまち狭い空間に閉じ込められた感を味わうだろうが、十代の小柄な少女が一人で乗るには十分といえるほどゆとりのある居住空間が保たれていたのである。
 その上、ここには自分だけしかいない、そんな気楽さも手伝って、ティーナの緊張はかなり解きほぐれていたのだった。
 一方、彼女が馬車の室内をなんとも居心地よく感じたのは、そのせいばかりではない。
 深紅の天鵞絨張りのソファの下はスプリングがだいぶ利いているおかげで、馬車が抱える大きな問題である、大きな振動を軽減するのに絶大なる効果を発揮していた。
 また、外観の質素で頑丈な作りに対し、内装は贅を尽くした素材がふんだんに使われ、手の込んだ装飾がこまやかに配されており、いわば、室内の雰囲気をそっくりそのまま、馬車の中に持ち込んだかのようで、乗客をくつろがせ、不自由な旅のつらさを感じさせない配慮をほどこした設計がなされていたのだ。
 さすが名門デヴォンシャー家専用の馬車だ。乗り心地の良さが抜群に良いのは当然といわざるを得ない。
 ファナトゥという地方の鄙住まいとはいえ、王都に住まう貴族にすら、けしてひけを取らない、りっぱな身上を備えていることが、この馬車ひとつ取っても存分にうかがえるほどだった。
 …そんなりっぱなお屋敷のご子息でもあらせられるディルナスさまほどの人が、いったいどういう了見で、自分みたいな薬師見習いの魔法学校の生徒なんかを、セシリア公妃さまのお話相手として選んだというのだろう?
 ティーナは先ほどから馬車の中で、幾度となくそのことばかりを繰り返し考えこんでいた。
 学長から話をうかがい、確かに自分が決断して訪問を承諾したものの、現実に仰々しく御者から接されれば接されるほど、ティーナは何とも場違いな場所に自分は出向くことになったのだとありありと知らしめられるのだった。
 大いに迷った。悩みに悩んだ。考えれば考えるほど、正しい選択など導き出せないような気がしだして、どうにも途方に暮れかけた。
 だが、さる筋から聞くところによれば、しない後悔の方がした後悔よりも、精神的負担の比重は高いという。
 ならば、ここはひとつ、物は試しと行ってみよう。そう思い、向こうの申し出を受け入れたのだから、くよくよ思い悩んでも仕方ないことではないか。
 何せもう、自分はこうして馬車に乗り込んでおり、すぐには引き返せないところまで来てしまっている。過ぎた時間を惜しんでも、けして元には戻せないのだ。
 もちろん最初から学園を出ることに不安もある上に、ファナトゥにて実際のところ何が自分を待ち受けているのか見当もつかない。もしも、どんな不測の事態に陥った時に、冷静に対処できる術が自分に備わっているなどとは到底思えない。
 けれども、やはり――。
 あの時、ちゃんと行っておけばよかったかもしれない…。
 そう心に重圧を感じながら学内にとどまっているよりかは、はるかにましとさえ思っているのも事実だった。
 それに思いきってえいやと相手の懐に飛び込んでみれば、存外、大したことではないかもしれない。
 案ずるより生むが易し、という言葉がどこかの国の書物に書いてあったような覚えもある。
 何かあったらその時はその時。自分にできる最善なる手立てを考えればいい。
 そんな風に半ばお気楽に、一方では捨て鉢な気持ちでこれからの未知なる領域に挑むことにしたのだった。
 ティーナはふと思い立って、ずっと下ろされている房飾りのついたカーテンをそっと指先でめくり、硝子がはめこまれた窓の向こうを眺めてみた。
 いったい陽が沈んでからどれくらいの時が過ぎ、今は何時頃かと推定を試みるも、空の星は無数の群雲に遮られて瞬かず、また家の明かりすらも全く目にとらえることができないのでは、判別のしようがなかった。
 そうなると寮の自室の引き出しから、懐中時計を持ち出してくるのを忘れてしまったことが、この際、大いに悔やまれるが、今となってはどうあがいてもいたしかたのないことだった。
 ティーナは周囲の事象から時間を計るのをあきらめ、再びカーテンを下ろし、ふうっと吐息をついた。
 カレンやセレは、とうに食事を終えて寮の部屋に戻っているのかしら…。
 せいぜい外出用の黒無地のケープコートを寮の自室に取りに戻るくらいしか、支度にかける時間も持てないまま、迎えの馬車に慌しく乗り込んでしまった。
 そのため、二人には直接会って別れを告げることも、こうして旅立つ事情などを説明できなかったのが、ティーナには今となってはとても心残りだったのだ。
 それと、もしもアガシにこのことを話していたら…?
 きっと彼のことだ。心配のあまり、自分も一緒についてくると言い出しかねないだろう。
 それとも、急にいきり立ってそんなの理不尽だ、素直に従って行くことなんてないやでと、まるで自分ことのように憤然となって止めるかもしれない。
 しかしどちらにせよ、こと、ティーナに関しては人一倍熱い反応を示すのは間違いないような気がするのだった。
 …それから、ラズリは。
 ティーナの脳裏にふとよぎる、仏頂面の涼しげなまなざしと整った面立ちを宿した少年の横顔。
 今から赴くのは、二人が初めて出会った思い出深いファナトゥの地。ラズリ…王太子ラズウェルト殿下にとっては、叔母であるセシリア公妃と従兄弟に当たるディルナスさまの住まうデヴォンシャー家なのだ。
 そんな所に何故にお前が一人で話相手として呼ばれる? そもそも親戚縁者でもない、たかが薬師の娘風情にいったい何をさせるつもりだというのだ。俺には到底、解せないな。
 …などと、どうにもこうにも釈然としないといった風情で、何かと理由をつけて、ラズリは自分が付きそわねばと俄然、主張を試みるだろう。
 優等生の自分が、劣等生の彼女の面倒を見てやってしかるべきではないかとか、どうとか、そんな風に多少なりともむりやりこじつけてでも。
 「――ラズリ」
 そっと彼の名前を口に出してしまったとたん、ティーナはなぜかたまらなくやるせなくなってしまい、じわりと目元を潤わせた。
 どうにも胸につかえていたものがこみあげてきて、無性なほど切なさを禁じえなかったのだ。
 彼はまた、怒るだろうか。こんなところで自分がめそめそと一人泣いている姿を目の当たりにしたら。
 きっと、とても嫌そうに眉根をひそめて、軽く一瞥を投げかけ、ぼそりとつぶやくだろう。
 「なんでおまえはすぐ泣くんだ。たかがそれしきのことで」とでも。
 けれどティーナにも、どうして自分がそうなってしまうのか、わからないのだ。わからないから、きっとどうしようもなくなって、それで自然と涙がとめどなくあふれて仕方がないのだと思う。
 確かに彼のことは心配でたまらない。ラズリがただのラズリ・マーヴィではなく、一国の王の世継ぎでもあるラズウェルト殿下であるが故に、よからぬ相手からその命を狙われているのは既に間違いないのだから。
 短いようでいて長かった、三日間の反省室行きの謹慎処分を終えた彼に、再びミランダが接触を試みようとするのは容易に推察できた。彼女に操心術をかけられた自分が、彼の命を殺めることにとうとう失敗してしまったのだから、すぐに次なる手立てを考え、行動を起こすのはむしろ当然といわざるをえない。
 でも…大丈夫よね。あの石があれば、きっとラズリを守ってくれるに違いないもの。
 禁忌とされた古代魔法を自在に扱うミランダ。古代魔法には、現代魔法には太刀打ちできない、強く堅固な呪術に相当する類のものや、使用した場合、その者の命すらも代償となるような恐ろしい魔導力を秘めた危険な技が数多い。
 しかし、それらあまたのを術を駆使する彼女とて、どうやらめっぽう苦手なのがあの守り石のようなのだ。
 ミランダの古代魔法にかかり、心を操られ、ラズリと知らずに刃を向けたティーナが、寸でのところで正気に取り戻すことができたのは、何よりもあの石のおかげでもあるのだから…。
 だからこそ、彼女の魔の手からラズリを守るためには、あの石の存在が絶対必要だといわざるをえない。
 ティーナが学院を去り行く際、ディーンに預けた守り石。彼は石を必ずやラズリに届けてくれると固く約束を交わしてくれた。それだけが今のティーナには頼みの綱であり、すがる寄る辺、希望の光なのだった。
 ラズリ…。ラズリ、ラズリ…。
 どうか、無事でいて。あたしが学院に戻るまで、石よどうかラズリを守っていて。
 これまでずっと、あなたが彼を小さい頃からいつも守ってくれていたように…。
 祈りにも似た強い念を、学院にいるラズリに向かって飛ばすが如く、ティーナが両手をしっかりと組み合った。
 とたん、またぽろりと涙が頬を濡らしそうになった。ので、ティーナはそっとまぶたをぬぐう。
 ここで泣いていちゃ、しょうがない。慰める人も、呆れて叱責する人も誰もない。自分一人しかここにはいないのだ。だから、心を常に強くもたなくては。
 ティーナがそんな風に決意を新たにしたのと、それはほぼ同時だった。その場にそぐわない、どことなく間の抜けたような、鈍く低い音が彼女の耳にしっかりと届いたのは。
 …やだ、あたしったら。
 慌ててティーナはお腹の辺りをそっと押さえる。それでも気持ちに反して体はまっとう正直なようで、再び我慢ならないと彼女に訴えかける音がその場に響くのだった。
 「こんな非常事態でもちゃんとお腹が空くのは、健康な証拠ね」
 ティーナは誰に聞かせることもなく、やれやれと独りごちると降参気味に膝の上に載せていた籠の蓋をぱたんと開いた。
 とたん、彼女の目に、わっと飛び込んでくるのは、たくさんのおいしそうな食べ物の数々だった。それは一人分にしては多すぎるほどの、調理パンや菓子パンの類、そんなもののあれこれだったのである。
 思わずティーナはごくりと生唾を飲みこんだ。
 白パンやライ麦パン等、パンの種類も豊富な上、中にはさまれた具材も多種多様で、どれから手をつけたらいいかと目移りしてしまうほどでもあったので。
 薄切りのパストラミビーフとしゃっきりレタスに穴あきチーズをはさんだもの。ハーブとオリーブにつけこんだスモークサーモンとハッシュドポテト。四色の豆を煮込んだラグーソース。ピタパンには色鮮やかななラタトゥイユがたっぷりはさまっている。
 さらに菓子パンも調理パンに負けじと、どれもこれも手の込んだものばかりで、いくつ種類ががあるのかひとつひとつ確かめることなど、どうでもいいこととして、片っ端から手にとりたくなるほどの魅力にあふれていた。
 甘く煮たりんごを載せたパイに、クリームやジャムをつめこんだこんがりキツネ色のパン。レーズンやくるみなどのドライフルーツをねりこんだパンにはザラメの砂糖がふんだんにかかっている。フレッシュクリームをつめこんだパンの表面にはうっすらとチョコレートがコーティングされ、アクセントとしてホワイトチョコまでもがデコーレトされていたりして…。
 街のベーカリーだってこんなに美味しそうなパンを並べる店はまれだろう。さぞかしデヴォンシャー家のお抱えシェフは、相当腕の立つ職人に相違ない。
 そんな分析をするのももどかしく、ティーナはわっと籠の中に手をのばしてサンドイッチのひとつを思い切りぱくつきはじめた。
 もっちりとして歯ごたえのあるパンの生地に、相性のいいお惣菜の数々。あっちもおいしそう、こっちも味見してみたいと、手を出しまくっては、さっくりしたパイやとろりとしたクリームにいちいち舌鼓を打った。
 それに魔法瓶の中に入れられていた珈琲も深い味わいでおいしかった。たった今焙煎した豆を挽き立ててドリップで淹れたもののように、香ばしく感じられたほどなのだから。
 もちろんミルクと砂糖もバスケットの中に添えられていたので、まさにいたれりつくせり、汚れた手をぬぐうおしぼりタオルや紙ナプキンも完備しているのだから、実に恐れ入る。
 とりあえず、これから何が待っているのかがわからないからこそ、腹ごなしをしておくのが何より大事よね、うんきっと。だって、お腹を空かしたままだったら、それこそいい考えなんてひとつも浮かばないもの。
 ティーナはそんなことを思いながら、しばらく目の前のごちそうの山を独り占めして堪能するのだった。


* * * * *
 ディルナス自らが先頭に立って案内し、ティーナは二階の奥にある客間に通された。
 彼からどうぞ楽にしていてと、部屋の中央部に置かれていた応接セットの肘掛椅子への着席を熱心に勧められたので、ティーナはそれに従ってすとんと腰を下ろした。
 「すまなかったね。朝早くから、食事も出さずに失礼した。後で何か、誰かにここへ持ってこさせよう」
 「いえ、そんな。あたし、そんなにお腹空いてませんからっ。昨夜たくさん、ご用意していただいたお夜食をいただいてて…。あの、どうもご馳走さまでした」
 ティーナがしどろもどろに御礼を述べつつ、座ったばかりのりっぱな肘掛椅子から慌てて立ち上がってぺこぺこと頭を下げる。
 それに対し、ディルナスは「どういたしまして」と軽く応じると、彼女に再度、椅子にかけるよう促した。
 「でもね、ちょっとうちが用意したものにしては、どうも急ごしらえすぎたものだったかもしれないなと思うよ。 名門デヴォンシャー家の名が汚すような、お粗末な内容というか…。はるばるロータスから出向いてもらったにも関わらず、ろくなご馳走もさせられなくてすまなかったね」
 「そんなこと…!」
 ティーナはぶんぶんっと大げさなくらいに首を振った。
 デヴォンシャー家の当主代理を務めるディルナスほどの身分ともあろうお人が、謙遜にも程があるというものだ、とでも主張するかのように。
 「ちっとも粗末なんかじゃなかったですよっ。調理パンも菓子パンも、本当にとっても美味しくって。夜中に小腹が空いたから、ちょっとつまむだけのつもりだったのに、気がついたらあたしったら、あっという間にほとんどたいらげてしまって…」
 椅子から身を乗り出さんばかりの熱弁をふるってしまい、途中でハッと我に返ったティーナは羞恥のあまりか、かあっと顔を赤らめて、うやむやに口ごもる。
 やだ……。これじゃ、あたしがいかにもすごくひもじい思いをしていたんで、ここぞとばかりにがっつきましたって、自ら暴露しているようなものじゃない?
 そんなティーナの胸中ぐるぐるうずまく微妙な乙女心を、敏く察しているのかどうかは定かではないが、ディルナスは終始温和な態度を崩さず、微笑み絶やさずティーナと向かい合ったままだった。
 そんなディルナスの対応に、どうにもいたたまれなくなったティーナは話題を変えるべく、自ら口火を切り出した。
 「それで、あの…ディルナス様? あたしがこちらのお宅にお招きを受けたのはあたしに…その…。何か、特別な御用時でもお有りなのでしょうか。えっと…もうすぐ学年末の試験も近いことですし、あたしまた学校に戻っていっぱい勉強しないと…」
 「そんな、来たばかりじゃないか。そう、急いで帰ることもないだろう?」
 「あ、でも…。いつまでもこちらにご厄介になるわけには…」
 「まあまあ。そんな大げさに構えなくてもいいじゃないか。君は何も案ずることないよ」
 「ええ? でもそれじゃ…」
 「ちょっとした休暇だと思って、しばらくゆっくりしていくといい。自分の家に帰ったつもりで、存分にくつろいでもらいたいな」
 ディルナスは満面の笑みをティーナに向けた。
 「王室付き専任の薬師のご息女でもある君がここで日々の生活を送るのに、何一つ不自由をさせないよう、屋敷一同努めてお世話をさせていただくよ。さすがに王都の王宮並みに整えるのは無理だろうけれど、これでも我が家はファナトゥ地方きっての名家のはしくれだからね。それなりにさせてもらう心づもりさ」
 「いえ、ですから。そういうことではなくてですね、あの…」
 自分を歓待すべく、心づくしのもてなしを彼女に施そうとするディルナスの配慮にはまことに感謝するものの、やはりティーナにはまず最初にはっきりとさせなくてはならないことがあった。
 何故この屋敷へ、突然このような招きを受けたのか。
 そしてディルナスは自分に何をさせたいというのか。
 まさか、本当に侍女のマージが言っていた、セシリアの話相手に自分が呼ばれたのだ、というのが真の用向きではあるまいに。
 それをディルナスの口からこの場できちんと説明を受け、自分がそれに納得するまでは、お茶の一杯だっていただくわけにはいかない。そう、ティーナはここに来る前からそれだけは頑なに心に決めていたのだった。
 「それじゃ」
 くすり。まるで謎をかけるかのように、ディルナスは唇の端に笑みをこぼした。
 それはティーナの詰め寄る態度とは反対に、彼女の言及をやんわりと受け止め、余裕すら感じさせる態度だった。
 「さっき階下で母上に会っただろう? さて、どうだったかな? 君の目から見て、母はどんな風に見えた?」
 すかさず話題を変えて自分に話を振ってよこすディルナス。
 それに対しティーナは当初、目を丸くして「は?」と聞き返してしまったが、すぐになんとかディルナスの問いの意図を把握したらしい。
 ちょっと目を伏せがちにしながらも、先ほど会ったばかりのセシリアの容姿を自分の記憶の中から引き出しながら、彼に自分の感想を伝えるのだった。
 「え、ええと…その…。こちらのお屋敷に参りました幼少の頃も、たぶんきちんとお目にかかっていなかったと思いますので、今日はその、初めてちゃんとお顔を合わせてお会いしましたが、本当におきれいでいらっしゃいますよね…。ずっとお噂はかねがね、こちらに参りまし折に父からも度々うかがっておりましたし、あと私の家にあります王家の方々を描いた肖像画のままというか…。あ、あの、とてもお若くていらっしゃるので、正直これもまた、たいそう驚きまして、ですね…」
 「ふうん。なるほどねえ…」
 うんうんとディルナスはティーナに呼応するようにうなづいた。
 ティーナにとってディルナスは目上の存在でもあり、また身分的にも格が上の貴人だとわきまえて話そうとしていることに気づいたらしい。
 ひとつひとつ言葉を選びながら、慎重に慣れない敬語を使い、年齢にそぐわない背伸びして答える姿がいじらしく、少しかわいそうになったと見えるらしく、「そのくらいでもういいよ」という具合に、続く彼女のコメントを軽く手で制した。
 「ああ、そうだね。いいよ、そんな気を遣わなくて。本当に率直な意見でいいんだ。そのまま、君自身の言葉で感想を聞かせてもらいたいと思ったんだから」
 「は、はあ…。そう、ですね…。なんていいますか、その…。少し、普通とは違うか、なー。…とか?」
 ディルナスに乞われたのを受け、多少なりとも普段の口調に戻してみるものの、それでもやはりどこか内容をぼかした物言いを続けるティーナに、彼はぷっと吹き出した。
 「ははは。だからさ、もっとはっきりと言ってかまわないんだよ。気狂いじみている、気が触れている。…あの人を一目見て、そうは思わなかったかい? ティーナ、君は」
 「――! あの、ディルナスさま…?」
 ずばり断言する彼に、ティーナの方が慌てた。
 ディルナスは養子の上、デヴォンシャー公夫妻と直接の血のつながりはない。
 そのことは、ティーナも父ガルオンからそれとなく耳にしていたように、事情を知る者にとってはほぼ周知の事実の上、またディルナス自身もそれを幼少の砌より十分に心得ているはずでもある。
 しかし、公夫妻はディルナスにとって、戸籍上とはいえ、唯一の家族なのはまぎれもない事実だ。
 養子として世話になっている身分でもあり、デヴォンシャー家に恩義を感じているのならば、母親であるセシリアのことを、そんなまるで、通りすがりの他人を見るような口ぶりでひどく蔑むのはいかがなものか。
 とはいえ、人それぞれによって家庭の事情というものが存在し、傍目からは何不自由ない暮らしの中に身を置き、誰よりも幸福そうに見えるディルナスとて、きっとそれなりに悩みは尽きないのだろう。
 それでもやはり、『家族』は『家族』だ。たとえ血のつながりはなくとも、同じ家に住まう者同士、互いをいたわりあってこその『家族』ではないだろうか…。
 そうは思うものの、しかし、ティーナの立場からはそんな忠言めいたことをディルナスに歯向かうように、あからさまに口にするのはえらくはばかられた気がしていたのでで、結局彼女はそのまま押し黙った。
 さすがにデヴォンシャー家の客人として、また父の立場も考慮すれば、身の程もわきまえぬ衝動的な言動はこの際、厳重に慎まねばなるまい、そう覚ったのだ。
 「……………」
 しかしディルナスは、自分を見つめるティーナの深い藍色の瞳の向こうに、言葉にならざる強い主張がこめられていることを察したらしく、多少なりとも申し訳ないという気持ちになったようだ。
 「ごめんね。僕が悪かったよ。…そういうつもりじゃなかったんだけども、君に誤解を与えてしまったようだね。すまなかった」
 自身の軽口が過ぎたものであったことを素直に認め、唇の端で薄く笑いながら、彼女に謝罪の意を伝えるべく、軽く頭を下げる。
 そして、
 「…義母(はは)は、とてもかわいそうな人でね」
 ぽつり、ディルナスはつぶやいた。
 先の話ぶりに見られる意気揚々さはどこへやら。うって変わった彼の豹変ぶりに、ティーナはひどくおののく。
 それまでディルナスが自分に呈していた温和でやさしげなまなざしはどこかへ消えうせ、何かひどく心痛むことが彼の身に降りかかっているのだろうかと、とっさに案じてしまうほど、その表情は暗く重く、実に悲哀に満ちた風情をたちどころに漂わせはじめたのだった。
 「…むかし、むかし。その昔、かわいそうなおひめさまがおりました」
 どことなく歌うように話ぶりで、ディルナスは口火を切った。
 「王都の王宮に生まれ、王のたった一人の妹姫として、蝶よ花よと育てられているうちは、まだ幸せだったに違いないと思う。でも、年を重ねるにつれ、彼女を取り巻く周囲の重臣たちから、その存在をさまざまな角度から値踏みをされはじめたんだ。その時から、悲劇の幕は切って落とされたことは、想像だに難くないだろうと思うよ。歌舞や音曲に親しみ、裁縫や刺繍を得意とし、様々な作法を一通りたしなみ、花を愛した少女は、誰からも慕われる、聡明で美しい姫君として国中の民草からたたえられただけに、成長し年頃を迎えた彼女がどんな末路をたどることとなったか…。それはそれは、実に見るも無残で、悲惨なるものだったに違いないな…」
 とつとつと語りだしたディルナスは、そこでいったん言葉を切ったが、すぐにまた先を続けた。
 ティーナは彼が一体何を言わんとしているのか、あまりにも話の内容が抽象的すぎて、その半分も理解できなかったが、それでもひたすら黙ってじっとその話の行く末に耳を傾けるのだった。
 「国にとって、王族の姫君というのは常に品物と一緒なのさ。重要なる取引に利用される、珍重な物質と同じでね。宝石や貴金属と同等の価値しか見出せないんだろう、国政を動かす者たちにとっては。そんな物と同一視された姫君を近隣諸国のどこに嫁がせるのが、いちばんこの国にとって最大の利益をもたらすか、否か。このことが国の繁栄にとって何よりも大切な問題だとされているんだ。現にそれは今の王の代になっても何一つ変わらない。君とてそれは十分知っているだろう? 君の父親のガルオンは薬師として王宮内にてそれなりの地位に立つ役職に就いていて、常に目の当たりにしているはずだし、三人の姫君の内、上の二人はそれぞれ別の国に輿入れさせたのはまぎれもない事実だからね。まだ王室には末姫が一人残されているけど、それとて大事な持ち駒のひとつだ。いずれはどこか、羽振りのいい大国の所へでも嫁がせて片がつくだろうよ。そしてその守りをますます強固に、全きもって完全なものとする。セレスト・セレスティアン万歳だ。産めよ増やせよ、永遠に栄えよ、天上の青をその名に冠する和が祖国よ、とね」
 ディルナスはまるで、己自身を重ね合わせて嘲笑するかのような勢いで最後まで一気に言い切ると、すぐ声をひそめて静かにつけ足す。
 「……せめて母上の相手も、同じ人であれば、どれほど救われたことだろうか」
 軽く首を振る。やるせなく、また、たまらなく。その顔に憂いと悲しみをしのばせて。
 「…僕は、母を助けたい。ただ、それだけなんだ」
 ディルナス…様?
 先ほどのずいぶん辛辣な皮肉をこめた祖国賛頌、といった感さえ漂う物言いとは異なり、えらく殊勝で淡々とした物言いだった。
 いったどれが彼の真意なのか、ティーナはわからず混乱をきたしかけたが、それでも根気よくその話につきあうべく、集中し続けるのだった。
 「いや、たぶんそれは母だけ、じゃないかもしれないな。自分も含めた全ての元凶でもある、悪しき災いを根絶やしにして、この国から何もかもを一掃させたい。――はじまりの空に、戻したいんだ」
 手を固く組み合わせ、そして目の前にいるティーナを真正面からしっかりと見据える。
 その瞳の色は、セルリアン・ブルー。
 どこまでいっても終わりがない、果てなく広がる遥か澄んだ空、そのままの色を鮮やかに宿していたのだった。
 そんな空の色した瞳が、ティーナを見つめる。
 まるで、彼女にこれだけは伝えたい、そして必ずや理解してもらいたいのだと訴えかけるかのように。
 「それが、僕の願いなんだ。ただ一つの、叶えたい望みだ。この命にかけても、それだけは貫き通したいと思っている。それにはティーナ、君の助けがいる」
 …え? あ、あたし、が…?
 ディルナスの口から自分の名前が何の前触れもなく、いきなりぽろりと出てきたので、ティーナは驚きのあまり、椅子からずり落ちそうになった。
 「ティーナ、君の力を借りたい。そのために君をここに呼んだんだ。どうか君に…助けてほしい。僕が…僕らが、とらわれているありとあらゆるしがらみから、全て開放されるために」
 「あの、それってどういう……」
 ティーナはディルナスからさらに詳しく事情をうかがおうと説明を乞う。
 自分に助けを請うことになったその決断の実、自分をここに招くまでに至る背景、そこに必ずや秘されているのであろう、彼のみが知るこれまでの経緯と詳細を聞き出そうとしたのだ。
 その、とたん――。
 これまでの流れを打ち破るかのように、こつこつとドアを叩く音がその場に響いた。
 「…はい。どうぞ?」
 「お客様とのご歓談中、大変失礼つかまつります。まことに恐れ入りますが、あの…ディルナスさま」
 ディルナスの入室許可を得て、ほんの隙間ドアが開いたかと思うと、ちらと顔を見せて頭を深々と下げてきたのは、先ほどの年配の侍女頭マージだった。
 王都から輿入れしてきたセシリア付の侍女でもある彼女自ら、接客中だとわかっていながら、ディルナスをわざわざ部屋まで出向いて呼び立てる、ということは…。
 何か母上に関連する大きな動きがあった、ということか。
 ディルナスは鋭く察すると「ちょっと、失礼」と、ティーナに言い残し椅子からさっと立ち上がり、マージの元へ寄って行った。
 「どうしたんだいマージ? …もしや、母上が何か?」
 ティーナの耳に入らないように気遣って、やや声をひそめて訊ねると、当の彼女はさっと顔色を変えて無言でうなずいた。
 「そうか…。今度は何? やっぱりいつもの癇癪起こして大暴れってとこかい?」
 「はい、すみません。そうですセシリアさまが、また…。もうこれ以上はどうしても私たちだけでは手に負えなくて…」
 「やれやれ。僕がティーナを連れて部屋を出て行ったせいか…。わかった、すぐ行く。――ティーナ」
 ドアの前に立ったディルナスがその場でくるりと振り返り、急に自分の名前を大きな声で呼んだので、とっさにティーナはぴんと背を伸ばして姿勢を正して彼と相対した。
 「ちょっと母のところに行ってくるよ。でもすぐに済ませてくるから、そこで待っていて。…いいね?」
 「は、はいっ。わ、わかりました!」
 「マージ、ティーナにお茶と軽く何か…。そうだね、水菓子でも出してあげて」
 「かしこまりました」
 「頼んだよ」
 軽く一礼したマージのそばをすり抜けて、ディルナスは足早に部屋の外に出て行った。
 そして、ほどなくしてマージ自身も。「少々お待ちくださいませ」とティーナに軽く会釈をし、再びドアをぱたりと閉めた。
 そのまま部屋に一人残されたティーナは、誰に聞かせることなく、ふうっと深いためいきをつく。
 それを皮切りに、先ほどまでの緊張がどっと解け、そのまま肘掛椅子の背もたれにだらんとよりかかり、椅子にゆっくりと身を沈めさせるのだった。
 
 
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